公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

江崎道朗

【第1111回】安倍氏に倣い政策本位の政治を目指せ

江崎道朗 / 2024.01.29 (月)


国基研企画委員・麗澤大学客員教授 江崎道朗

 

 今は亡き安倍晋三元首相は、政策本位の政治を目指していた。
 そもそも自民党の中に派閥が生まれたのは、中選挙区制度に対応するという側面が強かった。中選挙区では、複数の自民党候補が同じ選挙区で戦うので、その違いを明らかにするのに派閥ごとに特色ある政策を打ち出す必要があった。そのため同じ自民党でありながら派閥によって政策は異なることになったし、何よりも派閥間抗争が激化し、自民党としての統一した政策を打ち出すのが困難であった。特に外交・安全保障政策の不一致は深刻だった。
 しかし1994年、小選挙区制度の導入により自民党議員同士で戦う必要はなくなった。以後、派閥は政策研究への関心を弱め、専ら選挙互助とポスト配分の調整を図る集団になっていく。この政策軽視の派閥主導政治に対抗して、政策重視の派閥横断型政治を志向したのが安倍氏だった。

 ●スタートは派閥横断の勉強会 
 1997年、いわゆる従軍慰安婦問題が起きたことを受けて中川昭一衆院議員、衛藤晟一衆院議員(いずれも当時)らと共に安倍氏は「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」を創設、派閥横断型の近現代史勉強会を始めた。
 第1次安倍政権退陣後の2007年には、自民党の左傾化に対抗すべく、安倍氏らは派閥の枠を超えて保守系議員を結集し、「真・保守政策研究会」を創設した。2009年9月に民主党政権が誕生したことを受け、同研究会は2010年2月に創生「日本」に改称、中国に対抗する国家安全保障戦略、デフレ脱却のためのアベノミクスといった新たな政策を、民間シンクタンクと連携しながら研究・立案したのだ。
 そして安倍氏は2012年9月、清和政策研究会(現在の安倍派)ではなく、この創生「日本」を母体にして自民党総裁選に再び出馬した。
 それまでは派閥のトップが総裁選に出馬するというのが慣例であり、当時の清和政策研究会会長は、同じ総裁選に出馬した町村信孝衆院議員だった。よって派閥政治の論理に従えば、安倍氏は総裁選に出馬することができなかったはずなのだ。

 ●民間シンクタンクとも連携を
 結果的に派閥の枠を超えた支持を集めた安倍氏は自民党総裁選に勝利し、2012年12月の総選挙でも勝って第2次安倍政権を発足させた。そして派閥にも一定の配慮をしつつ、政策重視の政治、つまりアベノミクス、新たな国家安全保障戦略、平和安保法制、特定秘密保護法、自由で開かれたインド太平洋構想といった新基軸を打ち出したわけだ。
 政治資金不記載問題で派閥主導政治の弊害が露呈した今、政治家諸氏は、民間シンクタンクと連携して派閥横断型の政策重視の政治を目指した安倍元首相の志を受け継ぎ、日本をどうするのか、骨太のビジョンと政策を次々と打ち出す政治を志向してほしい。(了)
 
 

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