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田村秀男

【第1129回】日銀はデフレを再発させない決意を示せ

田村秀男 / 2024.03.18 (月)


国基研企画委員・産経新聞特別記者 田村秀男

 

 日銀は18、19日開催の金融政策決定会合でのマイナス金利政策解除に向け、著しく前のめりだ。連合集計の春季労使交渉賃上げ率が5.28%と33年ぶりの高水準で、2%の物価上昇目標達成のメドが立ったとの判断によるが、現実には国内需要の回復は弱々しい。利上げ決定以前に、デフレを再発させない確固とした決意と十分な説明を日銀に問いたい。

 ●なお不十分な内需回復
 日銀は金融機関の貸し出しを促す狙いの下、短期市場金利をマイナスに誘導する政策金利を2016年2月に導入した。現在の政策金利はマイナス0.1%で、これを0〜0.1%に引き上げる案が有力視される。国内銀行の貸し出し残高は昨年9月末時点で686.4兆円に上り、金利0.1%分は6864億円だ。金融界は「金利ある世界」が正常だと主張するが、いったんプラス金利になれば市場金利は上方に動きやすくなり、国民経済への影響は甚大である。銀行収益がおのずと押し上げられるにつれて、企業や家計など借り手全体の負担が増えることになるからだ。
 プラス金利が正当化されるのは、供給能力に対する需要不足の心配がなくなり、1997年以来のデフレ局面から抜け出たと確信できることが前提となる。だが、家計消費は昨年10〜12月期でも3四半期連続で縮小している。消費者物価上昇率は縮小傾向にあり、この1月で2%だが、外国パック旅行費を除けば1.9%まで下がる。それでも景気が持ちこたえているのは、民間企業の設備投資が上向いているからで、背景には円安がある。円相場は日米の金利差に左右される。日本が利上げ、米国が利下げという見込みがはっきりすれば、円高局面に転じかねない。
 賃上げも、判明したのは連合が集計した大企業主体であり、雇用の約7割を引き受けている中小・零細企業全体に大幅賃上げが浸透するかどうかは流動的だ。総合すると現時点では、勤労者全体の実質賃金が持続的に上昇し、内需主導でデフレからの脱却が間違いないとまでは言い切れそうにない。

 ●過去に繰り返した失敗
 もとより、日銀はデフレよりもインフレを警戒する特有の体質がある。2000年8月にはゼロ金利を解除した結果、デフレ不況に舞い戻らせた。日銀は2006年3月に量的緩和政策を解除し、7月には再導入していたゼロ金利を打ち切った。このときもデフレ圧力が去らない中での失策だった。日銀は今回も急ぎすぎるようだと、30年ぶりの脱デフレ絶好機が雲散霧消しかねない。植田総裁の責任は重大だ。(了)
 
 

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