ロシアのプーチン大統領と中国の習近平国家主席が先週、北京で会談し、戦略的協力の強化で一致した。米国の世界覇権切り崩しを図る「中露枢軸」の結成だが、実相は中国が「主」、ロシアが「従」である。
協力分野は、先端技術、主要部品・材料の供給網(サプライチェーン)から安全保障全般と幅広い。
●武器弾薬関連の対露輸出、戦争前の2.5倍
中国は、ウクライナ侵略で西側から制裁を受けているロシアに対し、国際資金決済サービスから、ドローンや半導体など軍民両用技術品の供給に至るまで支援してきた。習政権は殺傷兵器の対露提供についてシラを切るが、中国側の貿易統計項目の「武器・弾薬の部品とその関連」の対露輸出は、今年3月までの12カ月合計額は2021年の2.5倍にもなる。バイデン米政権は対中金融制裁をちらつかせて、対露軍事支援の停止を求めるが、習政権は「輸出管理強化」の口約束で済まそうとする。
戦時体制のロシア経済は脆弱さが否めない。消費者物価上昇率は8%近い水準で推移し、基準金利は16%で高止まりしている。ドル、ユーロなど主要通貨に対するルーブル相場は高金利でないと暴落しかねない。自動車や一般消費財など、中国からの輸入比率は2021年の約2割から2023年に4割近くに跳ね上がった。
プーチン政権は中国の協力なしには戦争継続も経済運営もままならない。戦争が長期化すればするほど、ロシアは対中従属度を強めることになる。中国はロシア原油を国際相場よりも2割前後高く購入している。2023年のロシア原油輸入は607億ドルだが、割高分をざっと計算すると約120億ドルになる。約1100億ドルのロシア軍事費の1割以上を中国が補填していることになるが、戦争長期化の利は中国に流れる。
●米の制裁関税に動じない習政権
エネルギーや穀物の輸出市場で大きなシェアを持つロシアの取り込みは、習政権の対外膨張戦略の成果である。習政権は勢いづき、モノのサプライチェーンの支配のために手段を選ばない。不動産バブル崩壊不況による内需不振に伴う生産過剰にもかかわらず、鉄鋼など在来品から電気自動車(EV)、半導体などの新分野に至るまで、増産投資を行い、多くの品目で安値輸出の洪水を引き起こしている。EVなどに対し、バイデン政権は高率の制裁関税を打ち出そうとするが、習政権は動じない。
消耗するロシアを従えて増長する中国が米国中心の国際秩序をずたずたに切り裂く。中露と地政学的に向き合う日本の対応がまずは問われよう。(了)