米国はトランプ政権の自国優先の下で国際秩序維持の指導的立場を放棄し、ウクライナでは「力による支配」が既成事実化されようとしている。9月3日の北京軍事パレードの壇上に中国の習近平国家主席、ロシアのウラジミール・プーチン大統領、そして北朝鮮の金正恩総書記が並んだ光景は、権威主義3国の結束を誇示すると共に、民主主義陣営との対立の露骨化を象徴した。
インドの戦略家でシンガポール国立大客員教授のラジャ・モハン氏が『フォーリン・ポリシー』(8月20日)で、「ウクライナは明日の東アジア」という岸田文雄前首相の警告(2022年6月シャングリラ会合での基調講演)を引用した。モハン氏の指摘のとおり、トランプ氏再登場の下では、岸田首相の警告は「米国依存のリスクを直視せよ」という切実な意味を帯びる。
●結党以来の危機
我が国を取り巻く安全保障環境が最悪となる中、与党自民党は「政治とカネ」をめぐる党内の混乱を収拾できず、極めつけは、保守岩盤といわれる安倍晋三政権当時の支持層の信頼まで失ってしまった。振り返れば岸田文雄政権期には、自民党結党以来の党是である憲法改正の発議が数の上で可能だった局面においても、それに踏み切らなかった。保守層の自民党離れは、石破茂政権のみならず自民党全体の問題とも言えよう。自民党の迷走、統治力の欠如に失望した自民党支持層の受け皿は、7月の参院選で新興政党へ流れ、自民党は今や結党以来の危機に直面している。
●歴史の分水嶺
10月4日の自民党総裁選は、自民党が少数政党化してこのまま埋没の一途をたどるのか、それとも保守層の総意を体現する第一党として再び国を導いていくのかを決める歴史的分水嶺となるだろう。
今や少数与党となり、他党に配慮せざるを得ない政治状況は理解できるが、総裁選においては、連立を組むべき他党との政策調整に議論を矮小化することなく、乱世の世界を生き抜く国家ビジョンを正面から提示すべきである。とりわけ、①「取引」重視に傾く米国との同盟の信頼性を確保しつつ、日本独自の抑止力をどこまでどのように強化していくべきなのか②国の生き方の基本となる憲法改正にどのように取り組んでいくのか―の明示は欠かせない。これらはいずれも7月の参院選において、自民党が明確な方向性を示さず、議論を避けてきたことでもある。
国家の向かうべき道を議論せず、個別の政策論に拘泥し続ければ、保守岩盤層は自民党にはもう戻らないだろう。(了)





