公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

岩田清文

【第1289回】自民総裁候補は憲法改正を論じよ

岩田清文 / 2025.09.22 (月)


国基研企画委員・元陸上幕僚長 岩田清文

 

 日本維新の会は9月18日、「21世紀の国防構想と憲法改正」と題した提言書を公表した。中朝同盟、露朝同盟及び中露協商による周辺国の脅威増大に加え、同盟国米国の変化並びに我が国国内の状況を踏まえ、日本の国防構想を新たな次元に進める必要があると主張している。

 ●先んじた維新の国防構想
 提言書に示された国防構想は、①「戦力不保持」を明記した憲法9条第2項の削除及び国防条項の充実②日米安全保障条約改定による相互防衛義務の設定③海洋国家連合及び「四海同盟」(日米豪比同盟)の締結―の3点を強調している。憲法9条第2項削除により集団的自衛権の全面行使を容認して、同盟国の存立危機に対しても「必要不可欠な防衛力行使」を行うとしている。これにより日米同盟の双務性を高め、共に戦う覚悟を持った安定した同盟にすべきだと説いている。加えて、日米豪比同盟という地域的集団防衛体制が構築でき、我が国の抑止力がさらに強化されることを強調している。まさに現下の厳しい安全保障環境を睨んだリアリズムに基づく、あるべき提言であると言えよう。

 ●具体論回避は責任の放棄
 日本維新の会に比し、自民党総裁候補は憲法改正に関し積極性が見られない。各候補の出馬会見において、小林鷹之元経済安全保障相は「憲法改正を当然実現すべきだ」と明言し、「自衛隊の憲法への明記」と「緊急事態条項の創設」の二つを優先課題として掲げた。一方で、高市早苗前経済安全保障相と小泉進次郎農林水産相は改正の必要性に触れながらも、具体案を示さなかった。さらに茂木敏充前幹事長と林芳正官房長官は、改正について全く言及していない。
 自民党は結党以来70年、「自主憲法制定」を党是として掲げ、チャンスがあったにもかかわらず、これまで一度も憲法改正の発議に至っていない。このような姿勢は、憲法改正を望む保守層の失望を招きつつある。
 日本維新の会が提言書において指摘したとおり、戦後最悪の安全保障環境の下で、憲法を頂点とする防衛体制の抜本的改革は避けられない。それにもかかわらず、多くの自民党総裁候補が憲法改正について具体論を避ける姿勢は、政権与党としての責任放棄に近い。総裁選は、次期首相を事実上決するだけでなく、国の進路を示す場でもある。各候補が憲法改正と安全保障のあるべき姿を論じない限り、自民党の支持離れは続くだろう。(了)