「ポスト石破」をめぐる自民党総裁選が9月22日に告示され、10月4日投開票へ向け、5人の候補による論戦が本格的に始まった。各候補に求めたいのは、国内投資による日本経済再生をめざす強固な意志と、着実に実行する戦略である。不発に終わった石破茂政権の高物価対策、実質所得減対策を競ったところで、これまで30年間もの経済の停滞から抜け出すことはできないからだ。
●日本は財政優等生
日本経済は今や、成長回復の絶好のチャンスを迎えている。主要国の中でも飛び抜けた財政優等生になっているからだ。政府はこれまで、財政赤字に束縛されて、財務省主導の増税と緊縮財政によって国内需要を萎縮させてきたが、財政資金を成長分野に弾力的に投入できる素地が固まりつつある。それを生かすか、殺すかはリーダーの資質次第である。
税収で社会保障、公共投資、防衛などの政策経費をどれだけ賄えるか、つまり国家財政の健全度を示すのは基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)の国内総生産(GDP)比である。内閣府が8月7日にまとめた国・地方合計の同比率は2022年度がマイナス3.6%だったが、23年度以降税収増とともに急速に好転し、26年度はプラス0.5%と黒字化が確実な情勢だ。黒字化は実に1990年代初め以来となる。
物価高は国民生活を直撃する半面で、税収の大幅増をもたらす。税収増を民間に還元しないと需要は減る。弾力的な財政出動は当然なのに、石破政権は緊縮財政路線を墨守し、経済成長は民間の賃上げに頼る無責任ぶりだった。
経済開発協力機構(OECD、本部パリ)の見通しによると、社会保障基金を含む政府全般のPB対GDP比率のマイナス幅は、日本が22年、26年にそれぞれ3.9%、0.7%であるのに対し、米国は0.7%、3.8%、ドイツは1.7%、2.6%、英国は0.6%、2.5%と悪化の一途で、日本が突出して縮小している。米国は大型減税、ドイツは防衛力増強のための財政投資拡充の結果なのだ。
●石破路線から決別を
石破政権の国内経済軽視の姿勢を典型的に示したのは、先の米国との関税交渉での投資合意である。今後3年半の間に対米直接投資を従来の3倍前後、5500億ドル(約80兆円)に拡大すると約束した。政府系金融機関の資金を使って、年間の一般会計の税収にほぼ匹敵するカネをトランプ政権に言われるままに供出する。いわば現金自動支払機(ATM)の役目である。少なくても石破路線から決別しなければ、総裁選の意味は皆無だ。(了)





