公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

西岡力

【第1287回】自民新総裁には「闘う政治家」を選べ

西岡力 / 2025.09.16 (火)


国基研企画委員兼研究員・麗澤大学特任教授 西岡力

 

 次の自民党総裁には「闘う政治家」がなってほしい。故安倍晋三元首相は、政治家には闘う政治家と闘わない政治家の2種類がいる、と語っていた。党内で後藤田正晴、野中広務、加藤紘一などリベラル護憲派が権勢を振るっていた時、安倍氏は中川昭一氏、衛藤晟一氏ら当時の若手有志議員らと憲法改正を党基本文書から削除する試みを阻止し、慰安婦が強制連行ではないことを党内若手の共通認識にして歴史教科書正常化運動を展開、さらに産経新聞以外の全マスコミが疑っていた北朝鮮による拉致を間違いない事実と考えて命懸けで問題解決に取り組むなど、闘う姿勢があった。

 ●安倍氏は闘った
 保守政治家が闘いに身を投じると、左寄りのマスコミに必ずたたかれる。安倍氏らはマスコミとも闘った。普通の政治家は選挙区にも読者がいると考え、特定の新聞を名指しで批判しなかった。ところが安倍氏は、慰安婦問題は朝日新聞の誤報から始まったと、朝日がそれを認める前から公然と発言し続けた。学校法人の森友学園と加計学園への便宜供与疑惑をめぐるいわゆる「モリカケ」問題で朝日やテレビワイドショーが執拗に安倍たたきを行ったときも、正面から反論して引かなかった。
 しかし、安倍氏が殉職した後、岸田文雄総裁(首相)が率いる自民党は闘う姿勢を失った。安倍氏を殺害したテロリストが旧統一協会への恨みを持っていたという情報が出るや、多数のマスコミはテロ批判をせず旧統一協会批判に狂騒した。その背景には、安倍政権の業績を認めたくないというマスコミ関係者の心理があったはずだ。そう考えなければ、旧統一協会を巡る新たな問題が起きていないのに協会たたきを始めた動機を説明できない。
 それに対して岸田氏は闘うことなく迎合して、宗教団体解散命令の要件という信教の自由に関わる重大な法解釈を一晩で変えた。前日まで、解散要件である「違法行為」とは刑法違反に限られると言っていたのが、民法上の不法行為も含まれると突然解釈を変え、その解釈を遡及的に適用すると答弁したのだ。

 ●待ち受ける理不尽な批判
 旧安倍派の政治資金不記載問題が表面化し、やはり安倍たたきをしたくて仕方のないマスコミが「裏金」という扇動的用語を使って非難を始めた。その時も岸田氏が率いる自民党には闘う姿勢がなかった。政治資金パーティー収入の一部を派閥が組織として政治資金収支報告書に記載しなかったことは問題だが、そのお金は支援者が政治活動に使ってほしいと出したものであり、検察の捜査で政治資金以外への流用が確認された議員は辞職した。それ以外の議員は法的責任を問われないことが確定したから、選挙で国民の審判を仰ぐと突っぱねて、あたかも私腹を肥やしたかのような悪質な決め付けには党を挙げて反論すべきであった。
 新しい自民党総裁には、憲法改正やスパイ防止法制定、情報機関創設など喫緊の課題に取り組み、その時必ず起きる理不尽な批判と果敢に闘う政治家がなってほしい。(了)