「半導体は現代の石油」と言われて久しい。いまや半導体なくして現代社会の活動基盤は成り立たず、その供給が途絶すれば国家機能そのものが麻痺することは明らかである。これは民生分野のみならず、軍事分野においても全く同様である。
●半導体を制する者が戦いを制する
ウクライナでの戦争においても、戦闘機、ミサイル、無人機、偵察衛星、さらにはサイバー戦を支えるコンピューターに至るまで、あらゆる兵器、機材に半導体が使用されている。戦闘機一機あたり数千個規模のチップが搭載されており、半導体は兵器の頭脳としてその性能を左右する不可欠の要素である。
このため、先進7カ国(G7)をはじめとする西側諸国は、ウクライナ戦争開始以降、ロシアに対し半導体を含む軍民両用物資の輸出規制を継続してきた。しかし、その効果には限界があり、現実には中国からカザフスタン、アルメニアなど第三国を経由した「抜け道」による流入が続いているのが実情である。
また将来の戦争は、宇宙・サイバー空間を基盤に、人工知能(AI)や大量のドローンを駆使した「知能化戦」に移行すると見られている。その中核を担うのが高性能半導体であり、まさに「半導体を制する者が戦いを制する」といっても過言ではない。
●有効な日米台韓蘭の連携
高性能半導体の製造で最も進んでいるのは台湾である。しかし、半導体産業を機能別にみれば、「設計」は米国が、「製造装置」は日本とオランダが、そして「製造」そのものは台湾と韓国がそれぞれ優位を占めている。
このように分業構造を持つ日米台に加え、オランダ、韓国といった民主主義諸国が、権威主義国家に対抗する形で同盟的な連合体「半導体同盟」を形成し、技術と供給網の両面で連携を強化することは、極めて有効な戦略的抑止の手段となる。
日本政府は現在、高性能半導体および汎用半導体の製造体制強化に取り組み、経済安全保障の観点からも注力している。しかしながら、軍事的抑止力の観点からの国家的主導性は、依然として十分とは言い難い。
来年に予定されるであろう「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」など戦略3文書の改定に際しては、経済安全保障を越え、「半導体同盟を通じて戦争を抑止する」という明確な戦略的ビジョンを打ち出すべきである。これこそが、日本の安全保障を確固たるものにする道である。(了)





