中国人民解放軍で台湾侵攻を主任務とする東部戦区が昨年12月29~31日、「正義使命-2025」と称する統合演習を実施した。中国の公式報道等から判断すると、米軍の接近阻止に焦点を合わせた統合演習であった可能性が大きい。
●第1列島線以遠に届くミサイル登場
29日、東部戦区は台湾周辺5カ所において陸・海・空・ロケット軍等が参加する統合演習「正義使命-2025」を開始し、同演習を「台湾独立分離勢力と外部の干渉勢力への厳重な警告である」と公表した。30日には台湾北部、南西部海空域に設定した航行制限区域に向けて中国沿岸部から長距離多連装ロケット砲の実弾射撃を実施。実質2日間にわたる訓練を行い、31日に演習終了を宣言した。
東部戦区は2022年のペロシ米下院議長(当時)の台湾訪問以降、年1~2回の頻度で台湾周辺の統合演習を公表している。2025年4月の統合演習は「台湾独立分離勢力に対する厳重な警告」と称し、台湾に対する海上封鎖の要素が強かったが、今回の演習では台湾に加え「外部の干渉勢力」をも対象と宣言した。演習宣伝ポスターでは、12月18日に米国が台湾への追加売却を承認した高機動ロケット砲HIMARS(ハイマース)を積載した貨物船や、米軍の輸送機、原子力潜水艦を阻止する絵が描かれている。
訓練に関する公式報道でも、米軍の艦艇や基地を標的にすると見られるDF-17準中距離弾道ミサイル(射程2000キロ)とDF-26中距離弾道ミサイル(射程3000~4000キロ)の発射機の移動が放映された。これまでの統合演習の報道では台湾を攻撃する短距離弾道ミサイルは継続的に登場していたが、第1列島線(日本から台湾、フィリピンにいたるライン)以遠を目標にするDF-17及び26の登場が確認されたのは、恐らく初めてである。
両ミサイルは対地・対艦能力を備えており、実射はされなかったものの、グアム方向から台湾支援のために接近する米艦艇を標的とし、海空軍と連携して統合打撃の模擬訓練を行った可能性が高い。
●日本は対中抑止力構築を急げ
今回の演習が焦点を米軍の接近阻止に移したとみられるのは、4月に予定されているトランプ米大統領の訪中を見据えた対米牽制の一つとも言えるが、中国軍の長距離打撃力が年々増強されている証左でもある。
中国は昨年11月の高市早苗首相の「存立危機事態」発言以降、日本が「軍拡・軍国主義復活」をしているとの非難キャンペーンを繰り広げているが、年末の演習の主な仮想敵は米軍であり、日本に焦点を合わせた訓練ではなかった。日本に対しては米国に追随するのみの存存と位置づけ、現時点では認知戦やレーダー照射等の威嚇で対処すれば十分と判断しているということではないか。
中国が2027年までの台湾侵攻準備完了にまい進している今、日本が台湾海峡の平和と安定を真に望むなら、保有すべき対中抑止力とは何かを冷静に分析し、早急に準備すべきである。(了)





