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岩田清文

【第1334回】中国の地域覇権阻止に日米は協力できる

岩田清文 / 2026.01.19 (月)


国基研企画委員・元陸上幕僚長 岩田清文

 

 昨年12月に示された米国の国家安全保障戦略(NSS)は「アトラス(天球を支える神)のように米国が世界秩序全体を支える時代は終わった」と述べ、冷戦後に続いた米国による世界覇権追求の終焉を公式文書で示した。中国との関係については「相互に有利な経済関係」の維持を掲げており、中国を「敵」と規定するのではなく「交渉相手」として位置づけている。他方で、中国やロシアに地域秩序の主導権を譲り渡すことまでは意図していない。

 ●国防長官の対中抑止構想
 東アジアにおける地域秩序に関して、ヘグセス国防長官はその具体像を相次いで示している。昨年5月31日のシャングリラ・ダイアローグ(シンガポール)演説では、西太平洋に戦闘部隊を前方配置し、第1列島線(日本列島~フィリピン)と第2列島線(小笠原諸島~グアム)における防衛態勢の強化により中国の侵攻意図を抑止すると述べ、両列島線内で中国の軍事的主導を成立させない構想を明確にした。
 1月15日の日米防衛相会談では、「日本での実戦的な訓練・演習を通じて、第1列島線をまたいで部隊を強化すること」が、抑止のために示すべき「作戦能力の誇示」になると強調した。すなわち、同盟国と連携した前方での訓練・展開を可視化し、中国側に「成功の見込み」を与えない態勢を構築する狙いが読み取れる。
 これらの発言は、米国が同盟国とともに西太平洋において、中国による主導権の確立を許さない意思を示したものと言える。
 重要なことは、この対中抑止構想が、同盟国に通常防衛で主導的な役割を担うよう求める基礎になっている点である。昨年12月6日の「レーガン国家防衛フォーラム」演説では、「韓国はGDP(国内総生産)の3.5%をコアの軍事費に充て、通常防衛力で主導的役割を担うことを約束した」との例を挙げ、「他のインド太平洋の同盟国もこれに続くと楽観的に見ている」と、日本に対しても防衛負担と役割拡大への要求を強めた。

 ●列島線防衛強化は日米共通の利益
 こうした中、日本として重要なのは、第1列島線における防衛力強化に加え、近年中国海軍の活動が拡大する第2列島線の防衛強化も視野に入れ、日米の作戦上の連携を強化することである。これは日本防衛に直結するのみならず、米軍の前方展開と持続性を日本が支えることにより、中国の西太平洋における主導権確立を拒否する態勢を確実にする。
 価値観より実利を重視する米国の姿勢が強まる中、日本としては、列島線防衛の実効性向上が日米双方の利益となる点を、トランプ米政権に戦略的に示していく必要がある。(了)