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岩田清文

【第1345回】首相訪米で示すべき日本の主体的同盟戦略

岩田清文 / 2026.02.16 (月)


国基研企画委員・元陸上幕僚長 岩田清文

 

 3月19日にワシントンで予定される高市早苗首相とトランプ大統領による日米首脳会談は、戦後日本の安全保障のあり方を再定義する重要な機会となる。トランプ政権が昨年12月に発表した国家安全保障戦略(NSS)及び今年1月の国家防衛戦略(NDS)は、戦後80年続いた米国主導による国際秩序の終焉を告げる歴史的な転換点を示す文書となった。もはや米国がギリシャ神話のアトラスのように世界を単独で支える時代ではなくなった今、日本は米国に依存する同盟関係から共に支え合うパートナーに脱皮できるかが問われている。

 ●日米「両得」をトランプ氏に説け
 NSS及びNDSは、米国本土防衛を第一の優先課題とするものの、中国を「19世紀以来、米国にとって最も強力な国家」と位置づけ、インド太平洋における中国抑止及び同盟国との防衛分担強化を重視事項として掲げた。具体的には、第1列島線(日本列島~フィリピン)に沿った防衛態勢強化の必要性を強調するとともに、同盟国等に対し国内総生産(GDP)比5%の防衛支出を求め、前世代のような米国への一方的依存からの脱却を促している。既に北大西洋条約機構(NATO)加盟国が2035年までに5%の達成で合意し、韓国も3.5%への引き上げを表明、台湾も2030年までに5%を目標とする中、日本も同様の期待を受けている。
 だが日本が示すべきは、単なる数字の受け入れではない。中国の急速な軍拡と海空軍の活動の太平洋への拡大を前に、日米協力なくして日本の防衛は成り立たない今、日本の主体的防衛力強化が米国の第1列島線強化戦略に直結するとの論理をトランプ政権に提示し、日米が共に「得」をする同盟の価値を説得すべきである。今後日本が、日本の領土、領海、領空である日本列島から小笠原諸島にわたる西太平洋地域の防衛態勢をさらに強化すれば、米国が第1列島線上の同盟・パートナー国に求める「港湾その他の施設への米軍のアクセス拡大」を支えることに繋がる。
 つまり、米国本土及びハワイやグアムから日本の港湾、空港にアクセスする米軍のルートを、日本の防衛態勢強化と符合させることは、日米同盟の信頼性を飛躍的に高めることとなる。この戦略は、日米双方が中国に西太平洋の主導権を握らせないという意志を示し、抑止力強化にも繋がる。

 ●真のパートナーへの脱皮
 訪米に臨む高市首相がなすべきは、防衛負担増加の要求に応えることではない。日本自らの意思で日米同盟の本質的な強化戦略を提示することにより、日米同盟の質を高めることである。同盟関係構築の歴史的転換点に立つ今、日本の戦略性が問われている。(了)