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奈良林直

【第1348回】新マンハッタン計画と成長戦略を連携させよ

奈良林直 / 2026.02.24 (火)


国基研理事・北海道大学名誉教授 奈良林 直

 

 トランプ米大統領は2期目の就任直後から、人工知能(AI)を桁違いに進化させた超AI(人工超知能=ASI)の開発を目指す「新マンハッタン計画」の推進を打ち出した。現在のAIが模倣と類推しかできないのに対し、超AIは人間のように考える能力を有し、瞬時の判断をすることができる。超AIの開発だけで、4年間に5000憶ドル(約75兆円)の巨額投資となる。

 ●超AI開発にまい進する米国
 もともとのマンハッタン計画は第2次世界大戦時の核兵器開発計画で、ノーベル賞受賞者を15人も集めて巨額の投資をし、世界初の核兵器開発に成功した。2発も原子爆弾を落とされた我が国にとっては、極めて不幸なプロジェクトであった。
 新マンハッタン計画の重点投資対象は、米政府の多くのスーパーコンピューターを統合した超AIインフラ整備と、①先端製造業②バイオ技術③レアアース④超AIに電力を供給する革新原子炉と核融合炉⑤量子コンピューター⑥半導体と超微細加工技術―の6分野で、それを同時に進展させることが必要である。
 第2次トランプ政権発足に先立ち、米議会の超党派委員会が中国を念頭に、AI版「新マンハッタン計画」の策定を提言していた。マイケル・クイケン委員は「AI開発には信じられないほどの先行者利益がある」と述べ、安全保障の面からも多額の公的資金を投じ、中国に先んじる必要があると主張した。それを受けてトランプ大統領は「米国は世界のAIの中心地になる」と強調した。
 超AIのプロトタイプをロボットに搭載し、戦闘機の操縦かんを握らせると、模擬戦では優秀なパイロットと互角の空中戦を行う。戦闘機の急激な加速でもロボットは失神しない。ドローンと超AIが組み合わされば、相手国は太刀打ちできない。
 米実業家イーロン・マスク氏は低迷する電気自動車(EV)の工場をAI搭載ロボットの工場に改造した。「頭脳」と「筋肉」を持つフィジカルAIである。
 ソフトバンクグループ会長兼社長の孫正義氏は目ざとくトランプ大統領に寄付を申し出て、日米関税合意に基づく対米投資案件第1号のAIデータセンター向けガス火力発電所建設のコーディネーターの地位を得た。発電所のガスタービンは米企業GEベルノバが供給するが、日本が得意とする蒸気タービンと組み合わせたガスタービン複合サイクル発電(GTCC)とすべきだ。国際協力銀行(JBIC)を通じて日本国民の税金も投入されるので、国民へ利益還元される投資でなくてはならず、米企業とソフトバンクだけがもうかるものであってはならない。

 ●日米首脳会談で協力促進を
 2月20日に高市早苗首相が施政方針演説を行った。経済安全保障、エネルギー安全保障などのリスクを最小化する「危機管理投資」と、AI、半導体、造船などの先端技術を花開かせる「成長投資」を促進し、経済成長のスイッチを「押して、押して、押しまくる」と表明した。3月19日に高市首相はワシントンでトランプ大統領と会談する。日米首脳会談では、新マンハッタン計画と我が国の成長戦略を連携させ、我が国の国益を最大にする協力の在り方を協議してほしい。(了)