米国とイスラエルの奇襲から始まったイランの反撃は先が見通せない。大規模な対地ミサイルの発射は減ったものの、自爆型ドローン「シャヘド」によるタンカーや周辺国重要施設への攻撃が続いている。専門家はイランの絶え間ない反撃を「弾薬庫の深さ(magazine depth)の戦争」と呼んだが、シャヘドによる攻撃は、ロシアに抗戦するウクライナと同じ、戦いながら装備を生産する「産業基盤の戦争」となっていることを示す。シャヘドは構造が簡単で安価に製造できる。いずれ停戦するとしても、火種は消えずに残るだろう。
●停戦後の安全航行に貢献
イランはペルシャ湾に機雷を敷設したと主張する。敷設の目撃情報はなく、触雷した船舶は出ていないが、単純な感応機雷や改造爆弾の機雷は製造も敷設も容易だ。主張の信憑性が低いからといって海域が安全とは言い切れない。わが国では戦後80年を過ぎても戦争中の機雷が発見されているように、ペルシャ湾内には過去の戦争で使われ、掃海されないまま砂に埋もれた機雷が存在する可能性もある。機雷からの安全は、掃海作業の累積した結果として高まっていくものだ。
わが国はペルシャ湾岸の石油資源に深く依存している。停戦となればペルシャ湾の安全を確保するために主体的に貢献するだろう。掃海業務は最も効果のある手段だ。わが国は先の大戦で機雷によって国民が飢餓に瀕した経験から、海上自衛隊は途切らすことなく掃海技能を継承し磨いてきた。
海上自衛隊は、2012年からペルシャ湾で米中央軍が主催する多国間掃海訓練に継続して掃海部隊を参加させている。小型の掃海艇は速力と航続距離に制約があり、日本からの航海にひと月以上を要する。船体が強化プラスチックになってもインド洋の航行は厳しい。
こうしたことから、ペルシャ湾に掃海艇を常時展開させ、乗組員を空路で交代させるアイデアが度々浮上した。
●コストを上回る利益
海上自衛隊にとって常駐で得るものは多い。日本とは全く違った厳しい作業環境で、世界の多種多様な機雷や最新の掃海技術に触れることができる。ペルシャ湾の水深は入り口が深く湾奥は浅い。高い気温によって海面と海底で塩分濃度が異なり、水流は不規則である。掃海業務には高い技能と海域への習熟が必要で、日本から到着してすぐには作業に取りかかれない。
政治的にはペルシャ湾における目に見えるプレゼンスとなり、何より遅滞なく地域の平和と安定にコミットできる。
わが国がペルシャ湾にエネルギー資源を依存し続けるのであれば、ペルシャ湾の安全は重要な国益と言える。イランがある限りペルシャ湾から戦争はなくならない。平時において掃海艇を常時派遣するメリットは、国内の防衛体制から掃海艦艇1~2隻を削るコストを上回るに違いない。(了)





