11月29日、台湾の統一地方選挙は終わった。地方で一番重要な役職である6都とも称される台北、新北、桃園、台中、台南、高雄の市長は、新北の朱立倫氏を除いて、与党国民党の手から落ちた。
●「6都」選挙で国民党惨敗
首都台北の市長選は、国民党候補が最も裕福な政治家といわれる連戦元副総統の長男、連勝文氏。対立候補は医者を辞めて初めて選挙に出る政治の素人、柯文哲氏で、台湾で初めての民進党を含む野党連合推薦という形を取り、注目された。結果は柯氏が85万余票、連氏が60万余票で、柯氏の大勝に終わった。
台中の市長選は、現市長の国民党候補、胡志強氏が在任13年、元外交部長(外相)の実力者であり、対する民進党候補の林佳竜氏は元行政院新聞局長、前立法委員(国会議員)で、やはり実力者である。この選挙は、民進党がこれまで高雄、台南の南部2都の市長しか握っていなかったのを、中部以北に進出できるかということで注目された。結果は予想された接戦でなく、63万余票対84万余票で胡氏が大敗した。
高雄市長の陳菊氏(民進党)は99万という最高得票数、台南市長の頼清徳氏(同)は72.9%という最高得票率をそれぞれあげた。桃園市の民進党候補、鄭文燦氏は、国民党の現市長呉志揚氏に、2万余票の僅差ではあるが勝った。呉氏は、国民党の呉伯雄元主席の息子である。
6都を含む全国22県市のうち、国民党は6県市、民進党は13県市で首長ポストを獲得した。国民党は選挙前の15県市からの大幅後退である。ちなみに国民党の敗北には、中台サービス貿易協定に反対して3月に学生らが立法院を占拠した「ひまわり学生運動」に影響されて、20代の若者が積極的に投票に行ったことが原因している。
●総統選へ民進党に弾み
民進党は2016年の総統選挙における優位は勝ち取ったが、6都選挙の優勢で総統候補該当者が増え、その選定がより複雑になる。国民党は総統候補者の芽が朱氏の辛勝、その他の敗北で潰れ、これまた候補者が不明瞭になった。投票日夜の記者会見で、国民党主席を兼ねる馬英九総統は江宜樺行政院長(首相)と曽永権党秘書長の辞任を発表。自らは翌日、党主席を辞任する意向を固めた。
台湾が国家として国際社会で存続するためには、「中国は一つであり、台湾はその一部である」と主張する中国と対抗していかねばならない。中国の脅威にさらされている諸国と手を結ぶべきだが、その中でも一番親しく、近い日本が大切である。
台湾は米国との直接の関係を発展させねばならないが、日本を通しての対米関係も考えるべきである。近く改定される日米防衛協力指針(ガイドライン)で台湾のことが言及されるように働き掛ける努力が必要である。中国に傾く国民党政権の挫折は、台湾の対日・対米接近の環境づくりにつながる。(了)