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髙橋史朗

【第475回】「慰安婦」登録なら日本もユネスコ脱退だ

髙橋史朗 / 2017.10.16 (月)


国基研理事・明星大学特別教授 髙橋史朗

 

 10月12日、米政府は国連教育科学文化機関(ユネスコ)から脱退すると発表した。ユネスコが今年7月、イスラム圏7カ国から共同申請されたパレスチナ自治区のヘブロン旧市街の世界遺産登録を決定するなど、「反イスラエル」的姿勢を続けていることに反発したものである。イスラエルも米国に追随し、ユネスコから脱退することを明らかにした。
 米国の脱退決定は日本にとって他人事ではない。ユネスコの「世界の記憶」登録の是非をユネスコ事務局長に勧告する国際諮問委員会(IAC)は10月24日から開催が予定されている。日中韓を含む8カ国の民間団体などが共同で申請した旧日本軍の慰安婦関連資料の登録を事務局長に勧告することがこの会合で決まるなら、日本は直ちにユネスコ脱退を決断すべきである。

 ●米は「根本的改革」を要求
 米国はレーガン政権時代の1984年に、ユネスコが過度に政治化している等の理由でユネスコを脱退し、その後ユネスコの改善が進んだ結果、2003年に復帰した。しかし、2011年のパレスチナ加盟に抗議して、分担金支払いを停止した。再度の脱退を発表した10月12日の米国務省声明は、ユネスコの「根本的改革の必要性」を訴えている。
 ユネスコ予算の22%を分担してきた米国と10%弱の日本が相次いで脱退すれば、ユネスコに大きな財政的打撃となる。米国は2018年12月に脱退が発効した後も、オブザーバーとしてユネスコへの関与を続ける。日本も同様な形で関与継続が可能だ。
 ユネスコは10月4日から開催されている執行委員会で、政治的濫用から「世界の記憶」事業を保護するのに必要な枠組みとして、疑義が呈された申請案件の扱いで合意が得られない場合、関係団体の対話を継続すること等を明記した制度改革の最終報告を採択する見通しだ。この採択を踏まえて、IACは共同申請された「日本軍『慰安婦』の声」資料の審査を先送りし、関係団体に対話の機会を提供すべきである。
 既にIACの下部機関である登録小委員会(RSC)は、2015年の「南京大虐殺」文書に続き、共同申請された慰安婦資料の「世界の記憶」登録をIACに勧告した可能性が極めて高い。

 ●対話を要請した学者声明
 10月16日には、「日本軍『慰安婦』の声」資料の「世界の記憶」登録に反対する日本の学者有志の声明が発表され、ユネスコ事務局長に対し、IACが申請案件の審査に及ぶことなく、関係者に対話の機会を提供するよう要請した。
 ユネスコでは2015年、明確な学術的批判があるにもかかわらず、IACがRSCの勧告を鵜呑みにして「南京大虐殺」文書の登録を事務局長に勧告し、それが最終決定となった。「南京大虐殺」文書に続き、「日本軍『慰安婦』の声」資料の登録をユネスコが強行する暴挙を許してはならない。(了)