新しい年、平成30年は、日本のみならず世界にとって大きな分岐点となる年だ。伝統的な米国の価値観と中国のそれがより顕著にせめぎ合う年と言ってよいだろう。日本の命運も大きく左右される変化の前で、あらゆる国のあらゆる人材が力を尽くす1年になる。国基研にとっては、創設以来掲げてきた憲法改正の実現に向けて、果敢に提言し続ける1年でもある。
●米国の後退に乗ずる中国
周知のように、米国は経済、軍事、教育などの各分野において世界随一の実力を持ち、価値観を守る努力によって人々を魅了し続けている。だが、その力に見合う国際社会への責任を果たすことに消極的になりつつある。
米国が退いて生ずる国際力学の空白に、中国が間髪を入れずに入り込み、影響力を高めようとする。習近平国家主席は、中国共産党の指導の下に団結した中華民族が世界の諸民族の中にそびえ立つと謳う。
そうした中、私たちは、日本だけでなく世界の国々がその国特有の文化・文明、価値観を守りながら、独自の道を歩める世界の維持に貢献したい。
今年は明治維新から150年。当時、殆どのアジア諸国が列強の支配下に入ったが、わが国は国民国家として存続し得た。経済力、軍事力、情報力において列強に到底かなわなかったわが国だが、先人達は富国強兵政策を実行し、国民には旧藩の境を越えて日本国民としての意識を芽生えさせた。国民全体が、欧米諸国の力と富の前で、現実を把握し、日本の非力を自覚し、発奮する賢明な人々だった。
●国際社会の現実に目覚めよ
私たちにはいま、世界第3位の経済力がある。憲法の制約に閉じ込められてはいるが、軍事力もある。情報力もある。しかし現実を見る冷静かつ客観的な目を、半ば喪ったのではないか。
いま何よりも現実に目覚めることが大事である。国基研は、日本を取り巻く国際環境の厳しさ、人口減少の深刻な負荷など、根本的な課題に向き合い、解決への道を全力で探りたい。
その意味で今年5月、私たちは創設10周年を記念するセミナーを開催するが、その機会を日本国の在り方への提言につなげられればと願っている。広い国際的視点に立って、自由、民主、人道、法治などの価値観の担い手となる国づくりに貢献できれば、とも願う。
そのような目標を心に刻んで国基研の会員の皆さまと共に歩み続ける年にしたい。(了)