公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

西岡力

【第566回】文在寅大統領に反論する

西岡力 / 2019.01.15 (火)


国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授 西岡力

 

 韓国の文在寅大統領が1月10日の年頭会見で、朝鮮人戦時労働者問題について見過ごせない発言をした。それに反論する。
 文氏は「条約(1965年の日韓基本条約)では全て解決しなかったと考えられる問題がいまだ少しずつ出てきている。これは韓国政府が作り出した問題ではない」として、問題の責任を日本に転嫁した。しかし、国際法は司法判断を含む国内法に優先するという原則があるのだから、日韓基本条約に伴う請求権協定で「解決」と明記した以上、補償は韓国の国内問題なのだ。
 文氏自身が大統領秘書官として参加した盧武鉉政権時代の韓国官民共同委員会も2005年8月に、請求権協定を通じて日本から受け取った無償3億ドルには「強制動員被害補償問題解決の性格の資金などが包括的に勘案されている」として、韓国政府に個人補償の責任があるという立場を明らかにしていた。文氏は14年前に自分も関与して政府が下した判断を突然覆したのだ。

 ●容認できない対日非難
 文氏は続いて三権分立原則を持ち出して「韓国政府としては、韓国司法府の判決を尊重しなければならないし、日本も基本的に不満があったとしても、その部分は致し方ないという認識を持ってくれなければならない」と日本を非難した。これも受け入れることのできない発言だ。
 韓国の最高裁が不当判決を下す前に、すでに日本の最高裁が同じ原告の訴えを退ける確定判決を出している。日本の立法府は1965年に条約と協定を批准した時、法律(財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定第二条の実施に伴う大韓民国等の財産権に対する措置に関する法律)を制定して韓国人が日本人(法人を含む)に対して持っている債権を消滅させた。従って日本の法秩序の下では、原告らが今回行った日本企業の財産差し押さえは、私有財産の侵害、すなわち盗みなのだ。
 日本政府は当然、日本の司法の判決に従う。原告の代理人らが今後訪日したら、刑事犯として取り調べる責任が日本の法秩序の下にある警察にある。日本企業も財産の侵害行為を放置したら株主から責任を追及される。

 ●日韓関係を壊したのは韓国だ
 韓国最高裁の不当判決は「日本の判決をそのまま承認することは大韓民国の善良な風俗や、その他の社会秩序に違反するものであり、従って我が国で本件についての日本の判決を承認して、その効力を認定することはできない」と言い放って、日本の判決を公序良俗に反すると切り捨てた。日本の法秩序と韓国の法秩序が真っ向から対立する異常事態が両国の間にいま起きている。
 そのようなことが起きないように、国と国は条約を結んで過去の出来事を清算する。ところが、韓国の司法府はその条約を無視する異常な判決を下し、文大統領は日本に対してその異常な判決に従えと開き直っている。日韓の正常な関係を壊したのは韓国側だということを明確にする毅然とした反論を日本の官民がなすべき時だと強調したい。(了)