アラスカ大学国際北極圏研究センター所長・国基研客員研究員 赤祖父俊一
残念ながら、地球温暖化問題は「気候学」という地味な純学問が特殊な政治目的に利用され、悪用され、翻弄された良い例として科学史上に残るであろう。気候学者ばかりでなく、他の分野の科学者も多く参加したので、問題は科学全体に及ぶ。こんな騒ぎを起こした科学と科学者は、一般市民の信用を失う可能性さえある。
●記録を操作したIPCC
地球温暖化問題が騒ぎになったのは、「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の暴走と、報道機関、政治家、官僚、利益団体がそれに乗ったことによる。IPCCは過去1000年の地球気温変動の記録に手を加え、あたかも人類活動により放出された二酸化炭素(CO2)が温暖化を生じさせたかのように操作し、それを続けると人類破滅につながる大災害、大異変が起きると予言してきた。IPCCは、これは2500名の世界的専門家の一致した予測であるとした。(実際は、大部分の学者はIPCCに奉仕させられただけであった。)
IPCCは、地球温暖化のCO2元凶論に疑問を持つ科学者を、あたかも宗教のごとく「懐疑論者」「否定論者」と呼び、斥けてきた。学問の真髄は討論にある。したがって、この態度はIPCCの気候学が学問から逸脱していることを示す。現在の気候学はそんな予測を正確にできるほど発達していない。地球の気候は人間活動と無関係に常に変動している。しかし、IPCCはCO2の影響を強調したいため、気候の自然変動を無視した。
●学問を政治から切り離せ
たまたま、IPCCの総本山の科学者とCO2元凶論を推進してきた科学者間のEメールが暴露され、科学者として絶対にあってはならないはずの記録操作という彼らの行動が明らかになってしまった。しかも、IPCCの報告書の不正確さや、報告書が全員一致でなかった証拠も欧米では毎日のように報じられた。しかし、日本の一般市民はこの事件についてほとんど知らされないでいる。
地球温暖化をこれほど大問題にした報道機関は、顛末を正しく知らせる責任があるのではないか。
ついでではあるが、各国の首脳を交えた国際会議は、「地球を救う会議」どころか、後進国が温暖化を理由にして先進国から資金をせしめようとする会議に成り下がった。気候学がこんなことにも悪用されている。私は数年前から拙著その他で、気候学を政治から切り離し、純学問に戻すべきであると主張してきた。それなしには、この学問の健全な進歩はあり得ない。(了)
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第27回:地球温暖化騒ぎから学ぶこと(赤祖父俊一)