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有元隆志

【第619回・特別版】日本外交が生かすべきポンペオ氏との人脈

有元隆志 / 2019.09.17 (火)


産経新聞正論調査室長 有元隆志

 

 ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が解任された。同盟関係を重視し、北朝鮮による日本人拉致事件に理解が深かった人物だけに、日本にとって痛手だ。しかし、国家安全保障会議(NSC)の内幕を描いた『ランニング・ザ・ワールド』の著者デービッド・ロスコプ氏がニュースサイト「デーリー・ビースト」に「(ボルトン補佐官の2018年3月の)就任時からこうなると決まっていた」と書いたように、ある程度想定されていたことだった。

 ●北との「悪い取引」は回避か
 トランプ氏とボルトン氏はイランや北朝鮮をけなすことを好む点では共通しているが、トランプ氏が両国と「ディール」(取引)をしたかったのに対し、ボルトン氏にとってそれは「降参」(capitulation)のようなもので、2人が仲違いするのは時間の問題だった、とロスコプ氏は言う。
 ワシントン特派員時代、ロスコプ氏に取材した際、「最高の国家安全保障問題担当補佐官」と評されているのは、ブッシュ元大統領(初代)時代のスコウクロフト氏で、「大統領の信頼が厚く、国務長官や国防長官のよき仲介役だった」と語っていた。大統領の信任を失ったボルトン氏には居場所はなかったということだろう。1期のうちに4人目の国家安全保障問題担当大統領補佐官が就くのは1947年のNSC発足以来初めてとなる。
 ワシントンの外交筋は「これで完全に安保エスタブリッシュメントが一層され、トランプの天下となった」と語る。その上で、同筋はトランプ氏が来年秋の大統領選をにらみ外交成果を上げるため、イランや北朝鮮との「ディール」にまい進するだろうと予想する。同時に「勘は鋭いトランプ氏のことだから、民主党から批判を浴びないよう『悪いディール』は結ばないよう注意を払うだろう」とも付け加えた。

 ●キーパーソンは北村国家安全保障局長
 交渉の実務を担うのがポンペオ国務長官で、政権内でより比重が増すとみられる。日本としてもポンペオ氏との人脈は一層重視すべきだ。河野太郎前外相は良好な関係を築いていた。茂木敏充外相は未知数だが、米情報筋は「北村―ポンペオ関係が生きてくるのではないか」と指摘した。日本版NSCトップの国家安全保障局長に就いた北村滋氏のことで、内閣情報官時代、中央情報局(CIA)長官だったポンペオ氏との間でパイプを築いた。北村氏は北朝鮮と秘密裏に接触しているとされる。ポンペオ氏は北村氏が安倍晋三首相と近いことを熟知しており、連携を図ってくる可能性はある。
 「トランプ再選のための政権」という色彩がより濃くなるなか、拉致事件をはじめ日本側の立場をよりきめ細かく説明していくことが求められそうだ。(了)