公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

岩田清文

【第966回】日米共同演習でロシアを牽制せよ

岩田清文 / 2022.09.20 (火)


国基研評議員 岩田清文

 

 9月11日、ウクライナ北東部ハリキウ州の要衝イジューム市を奪還したウクライナ軍の反攻作戦は、4日間で80~100キロという驚異的な進軍速度だった。当時、ウクライナ軍の作戦構想は、同国南部に戦力を集中しており、ハリキウは反撃の主正面ではなかった。しかし、ロシア軍の弱点が確認されたため、戦車、装甲車を中心とする機動部隊が攻撃し、ハリキウ州の大部分を奪還した。

 ●ウクライナ戦局の転換点
 南部では8月29日、ウクライナ軍が領土奪還に向けた反撃開始を宣言しており、ハリキウ正面も含め、ロシアとウクライナの攻防が大局的に逆転した可能性がある。
 ロシアの作戦は4月以降、東部及び南部の占領地域拡大が中心となっていた。しかし米欧の情報・武器等支援を受けたウクライナ軍の奮闘により、兵士、兵器、弾薬、ミサイルが枯渇する中、ロシア兵の士気も低下し、まともな戦闘が継続できない状況になっている。ロシアのプーチン大統領は9月16日、東部2州全域制圧を目指す目標の「修正はない」と表明し、戦果も「急がない」と述べ、敢えて余裕を見せている。しかし、最低限、東部2州及びクリミアのラインを死守したいロシアにとって、戦況が不利に傾いていることは事実である。
 一方で、ウクライナのゼレンスキー大統領は9月4日、「我々はすべての領土を解放する」と表明し、東部のみならず、2014年にロシアに併合されたクリミアの奪還まで念頭に置き始めた。

 ●試される米国の指導力
 ウクライナ支援の核となってきた米国は、開戦当初からプーチン大統領を刺激し過ぎないように、情報支援は積極的に行うものの、武器供与については、ロシア領土内への攻撃ができない程度にコントロールしてきた。
 今、米国が最も神経を使っているのは、今後、ウクライナの反撃が進展し、東部2州あるいは、クリミアまでをも奪還できる状況になった時、それをどこまで許容するかという点であろう。東部2州・南部2州の攻防が続いていく中、追い詰められたプーチン大統領が、窮鼠きゅうそ猫を噛み、小型核兵器の使用という蛮行に及ばせないよう、ゼレンスキー大統領をなだめながら、どこで停戦ラインを引くのか、米国の指導力が試される。
 既に、米国防総省では、戦争終結以降も含め中長期的にウクライナを支える方途の検討を始めたと報道されている。日本ができることは少ないが、戦局を少しでもウクライナに有利にするため、日米共同演習を北海道の演習場において実施することは、ロシアの極東戦力を引き付ける上で、意味がある。(了)