第2次岸田再改造内閣は「入閣待機組」を多く起用するなど派閥順送りの新鮮味に欠ける陣容となった。その中で評価できることと言えば、外相に上川陽子氏、防衛相に木原稔氏を据えたことだ。
前外相の林芳正氏は、就任直前まで超党派の「日中友好議員連盟」の会長を務めるなど「親中派」として知られていた。この議員連盟は在日中国大使館が「日中友好7団体」の一つに数えていた。林氏がいくら親中派でも、今の中国には全く通用しないことが、東京電力福島第一原子力発電所処理水の海洋放出をめぐる中国の対応を見ても鮮明になった。中国は何ら科学的な根拠に基づくことなく、日本産海産物の全面停止を決めたからだ。日本政府当局者は「林氏が醸し出していた親中的なイメージがなくなることはいいことだ」と語る。
●「法の支配」を推進
上川氏はオウム真理教の元教祖、麻原彰晃(本名・松本智津夫)死刑囚ら13人の死刑執行命令書に署名したことで知られる。産経新聞の取材に「いずれのケースも大臣室に1人でこもり膨大な資料を読み慎重に判断を下した。執行前日には自分の先祖の墓を参った。初の死刑執行以後、毎朝、自宅でお経を唱えている。それだけ法相の責任は重いと感じている」と語った。責任を全うしようとするその姿勢と胆力に、当時の安倍晋三首相や菅義偉官房長官らは感銘を受けた。
外交では法相時代の経験から、国際社会における「法の支配」を推進する議員連盟の会長として、普遍的な価値の確立に積極的に取り組んできた。中国、ロシア、北朝鮮など専制国家に対峙するうえで、いまほど「法の支配」の推進が求められている時はない。上川外相が国際社会の中で存在感を発揮することを期待する。
●台湾海峡危機に適任
木原氏は就任前まで超党派の「日華議員懇談会」の事務局長を務めるなど親台派議員として知られる。安倍、菅両政権では安全保障担当首相補佐官を務めたほか、昨年12月の国家安全保障戦略など安保3文書の改定では、与党実務者協議の一員として策定作業に関与し、安全保障政策に精通する。7月に行われた「台湾海峡危機政策シミュレーション」では防衛相役を担当した。台湾海峡危機を睨んだ場合、木原氏以上の適任はいないだろう。
日本は待ったなしで安全保障上の危機に向き合わないといけない。上川外相、木原防衛相は責任の重さを自覚し、中国だけでなく同盟国の米国とも堂々と渡り合ってほしい。(了)