公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

有元隆志

【第1160回】安倍氏の遺志を継ぐ政治家よ、立て

有元隆志 / 2024.07.08 (月)


国基研企画委員・産経新聞特別記者 有元隆志

 

 7月8日は安倍晋三元首相が暗殺された日である。2年前、国家基本問題研究所で企画委員会を開催していた時に、衝撃の知らせは届いた。国政選挙の最中に起きたこのテロは民主主義に対する重大な挑戦であり、私たちは永遠に忘れてはならない。
 この2年間で日本を取り巻く情勢は大きく変化した。中国、ロシア、北朝鮮、イランの4か国は新「悪の枢軸」として、「力による支配」を押し付けようとしている。「核の脅威」は現実化している。日本の唯一の同盟国、米国は11月の大統領選をめぐり混乱状態にある。安倍元首相は「日本を取り戻す」をスローガンとして掲げたが、まさに日本の自立が今以上に求められている時はない。

 ●待たれる新指導者の登場
 そうした状況の中で自民党総裁選が9月に行われる。7日投開票の東京都知事選でもみられたように、日本共産党と事実上連携した野党第1党の立憲民主党には政権を任せられない。政権担当能力があるのは自民党しかいないのである。
 岸田文雄首相は1月から6月まで続いた通常国会で「政治とカネ」問題への対応に右往左往した。安倍元首相の「遺志を継ぐ」と言いながら、安倍氏が目指した憲法改正に関し、通常国会では何ら指導力を発揮することはなかった。内閣支持率も低迷し、岸田首相ではこれ以上、日本を前に進めることはできない。新しい指導者の出現が期待されている所以である。
 にもかかわらず、候補者とされる面々は声を上げようとしていない。早く手を挙げると党内から妨害されるのではないかと躊躇ちゅうちょしている。麻生太郎副総裁や菅義偉前首相が誰を推すかに注目が集まるようでは本末転倒である。我こそはという国会議員は手を挙げるべきだ。

 ●自民党に人材はいる
 高市早苗経済安全保障担当相や小林鷹之前経済安全保障担当相は安倍氏の遺志を継いでくれる候補であろう。高市氏は一日も早く閣僚を辞任し、選挙戦に集中すべきではないか。小林氏も月刊「正論」8月号のインタビューで「(首相を)目指す」と明言しており、党内に向けて意思を表明すべきだろう。49歳の小林氏は日本の政界では若いかもしれないが、欧州では47歳のメローニ・イタリア首相、44歳のスナク前英首相のように40代の政治指導者は少なくない。早すぎることはないのである。
 総裁選では活発な論戦を期待する。そして、道半ばで倒れた安倍元首相の遺志を岸田首相のように口先だけでなく真の意味で継いでいってほしい。(了)