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有元隆志

【第1186回】石破自民党新総裁は「過去」から脱却を

有元隆志 / 2024.09.30 (月)


国基研企画委員・産経新聞特別記者 有元隆志

 

 自民党の石破茂新総裁には御慶およろこび申し上げるが、これまでの言動から見ると、石破氏がこの国を率いる指導者としてふさわしいのか、はなはだ疑念を持たざるを得ない。何よりも石破氏は安定的な皇位継承について、過去に例がない「女系天皇」を選択肢として排除しない考えを示してきたからだ。
 石破氏は総裁選期間中の産経新聞のインタビューでは「男系男子で連綿とつないできた歴史を決して軽視すべきではなく、個人として男系男子で継承されるべきだと考えている」と述べ、発言を軌道修正した。この一線は必ず守ってほしい。

 ●日朝連絡事務所設置構想は撤回せよ
 拉致問題についても問いたい。総裁選での石破氏の推薦人には岩屋毅氏をはじめ日朝国交正常化推進議員連盟(日朝議連)の主なメンバーが入っている。日朝議連は東京と平壌に連絡事務所を置き、拉致被害者について調査することを主張し、石破氏もそれに同調してきた。
 北朝鮮当局は当然、拉致被害者の情報を全て把握している。連絡事務所と調査委員会の設置は北朝鮮の時間稼ぎに手を貸すことになる。石破氏はこの方針を撤回すべきだ。
 エネルギー政策で石破氏は「原発ゼロ」に向け最大限努力する考えを示してきた。総裁選ではこれも軌道修正し「必要な原発の稼働は進めていかねばならない」と語った。
 日本のエネルギー自給率は先進国の中でも極めて低い。太陽光など再生可能エネルギーの比率を高めると電気料金の高騰は避けられず、産業は国際競争力をそがれ衰退する。「再エネの主力電源化」はやめて、原子力発電の最大活用を図るべきだ。

 ●時期尚早の「アジア版NATO」
 石破氏は安全保障の専門家を自任しながら、アジア版NATO(北大西洋条約機構)の創設を持論としている。新総裁として初めて臨んだ会見でも「(アジアには)日米、米韓、米比の同盟関係が多く存在している。そういうものを有機的に結合することを考えるべきだ」と意欲を示した。時期尚早である。日米地位協定の見直しも今持ち出すべきではない。「防災省」創設についても、防災対応は多くの場合、自衛隊が派遣されている現状からすると、屋上屋を重ねるようなものだ。
 石破氏は近年、「党内野党」として執行部に批判的な意見を放ち、リベラルメディアから重宝されてきた。総裁となった今、他人に責任を押し付けることはできない。米国のトルーマン元大統領のモットーである「The buck stops here(最終責任は我にあり)」をよく噛みしめてほしい。(了)