10月17日、習近平中国共産党中央総書記(国家主席、中央軍事委員会主席)が、人民解放軍のロケット軍の旅団を視察した。その際、「対象に焦点を当てた新装備、新技能、新戦法の訓練を強化せよ」と訓示し、公開された映像から、習氏が「新装備」と呼んだ新たな種類の弾道ミサイルが配備されていることが確認された。
視察先の旅団名は報道されていないが、中国中央テレビの映像から、安徽省に所在する第611ミサイル旅団と推定される。習氏は視察の際、同旅団の歴史資料室で、核弾頭搭載可能な準中距離弾道ミサイルDF-21Aの模型を前に説明を受けており、同旅団がかつてDF-21Aを装備していたことを示唆した。
●対日任務部隊の装備が「グアム・キラー」に
DF-21Aは射程約2000キロであり、同基地周辺から発射すれば西日本を、沿岸部まで進出すれば本州全域を射程に収めることができる。すなわち、同旅団はかつて対日核威嚇任務を有する部隊であった可能性がある。
歴史資料室視察後の習氏を迎えたのは、駐車場に整列した中距離弾道ミサイルDF-26であった。映像では25基のDF-26が確認でき、同旅団の装備がDF-21AからDF-26に更新されたことが判明した。DF-26は射程約3000~4000キロ。中国からグアムの米軍基地を射程に収めるため、「グアム・キラー」と呼ばれている。
グアムまで到達するDF-26への装備更新は、インド太平洋地域に中距離ミサイル配備を開始した米国への抑止力強化を企図してのことであり、習氏視察報道は米国への牽制であろう。
また、DF-26は核弾頭と対地、対艦の通常弾頭という3種類の弾頭を装填可能であり、映像からは弾頭の形状がやや異なる2種類が確認できた。同部隊は以前、核ミサイルを装備していたことから核弾頭を運用する可能性が大きく、核と対地の2種の弾頭を運用している可能性もある。2種類を運用しているとすれば、攻撃される側はどちらの弾頭か判定するのは困難であり、対応が後手に回る恐れがある。
●増大する核の脅威
一方、日本にとっては対日核威嚇の任務がどの部隊に移管されたのかが大きな問題となる。射程から内陸部のDF-26または沿岸部の極超音速滑空兵器(HGV)搭載可能な準中距離弾道ミサイルDF-17の部隊に移管された可能性が考えられる。
DF-26部隊とすれば、配備基数と性能からDF-21Aより大幅に対日核戦力が増強されることになる。DF-17は核弾頭搭載可能か現時点では不明であるが、迎撃困難なHGVに核が搭載されればその脅威は大いに増す。今後は更に広く深くロケット軍の動向を監視し、対日脅威を見積もることが必要であろう。(了)