石破茂首相のダブルスタンダード(二重基準)ぶりは昨年秋の就任時からたびたび批判されてきた。米国とイスラエルによるイラン攻撃をめぐってもそれが繰り返された。
石破首相は22日午後、米国によるイランの核施設攻撃について「我が国としては、事態を早期に沈静化することが、まずは何よりも重要であると考えている。同時にイランの核兵器開発は阻止されなければならない」と、評価を避けた。
イスラエルによる攻撃直後の13日に「到底許容できるものではない。極めて遺憾で強く非難する」と発言したのとは対照的だ。日本政府としてイスラエルに対する異例の非難について、政府関係者は「攻撃を容認すれば中国や北朝鮮に誤ったメッセージを送ることになる」と説明していた。
●イスラエル非難と不整合
ならば、米国もイスラエルも共に先制攻撃だ。イスラエルを批判したのだったら、同じ基準で米国も批判すべきだろう。しかし、予想された通り石破首相にはできないことだった。日本は米国による「核の傘」に守られているからだ。
就任前は「核の傘」による抑止力の有効性を検証することは「国家の責任」と主張していた石破首相だが、トランプ大統領を非難する胆力など持ち合わせていないことはこれまでの首脳会談をみても明らかだ。
だったら、イスラエル非難などすべきではなかったのである。イスラエルを擁護すると世論の反発を招き支持率の低下を招きかねないと、都議選や参院選向けに非難したとしたら論外だ。
●安倍元首相存命ならば
当然のことながら石破首相はトランプ大統領から事前に攻撃を告げられていなかった。これが生前、トランプ大統領と親しかった故安倍晋三氏が首相の立場だったらどうだろうか。元側近らは6月中旬、カナダで行われた先進7カ国首脳会議(G7サミット)の際の日米首脳会談で、おそらくトランプ大統領は安倍氏に相談しただろうと口々に語る。ある元側近は安倍氏だったら次のように主張したと予想する。
「一発必中なら核施設攻撃をやったらいい。ただしそこまでだ。イランには原子力発電用の核濃縮は最小限認めてやるべきだ。日本みたいに、丸裸で世界の監視を受けさせる条件で」
安倍氏ならばもっと前から事態の悪化を防ぐため動いていただろうが、ここまできたら限定攻撃に止めさせるということだ。「安倍元首相が生きていたなら」と言ってもむなしいことだが、これから米国の攻撃を支持するか「政府内できちんと議論する」と、逃げ腰の石破首相とは異なり、「外交」を展開していたことは間違いないだろう。
イランは日本にとって長年の友好国である。米国の攻撃を支持するか議論するよりも、これ以上の事態の悪化を防ぐために日本としてできることは何か、あらゆるツールを使って動くことが求められている。それが「外交」ではないのか。(了)