2020年6月の記事一覧
【第695回・特別版】ボルトン回顧録に見る米朝関係
国基研企画委員兼研究員・福井県立大学教授 島田洋一 トランプ大統領再選に向けて活動している米保守派が、ボルトン前大統領補佐官(国家安全保障担当)の回顧録を「裏切り」と強く批判するのはよく分かる。リベラル派が大統領に否定的な記述のみを取り上げてニュースにしていることの裏返しと言える。 しかし、この回顧録の積極的意義も見逃すべきではないだろう。米朝交渉の実態がより明瞭になっ...
【第694回】今こそ敵基地攻撃能力保有を
産経新聞正論調査室長兼月刊「正論」発行人 有元隆志 地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画断念を機に、敵基地攻撃能力の保有に踏み切るべきだ。「迎撃ミサイルを発射後、ブースター(第1段ロケット)を確実に演習場内に落とすことができない」として、計画停止を発表した河野太郎防衛相の対応は稚拙であったが、これを奇貨として、これまで日本の防衛政策を縛ってきた極端な「専守...
【第693回・特別版】北朝鮮の第2の首領になった金与正氏
国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授 西岡力 北朝鮮は金正恩独裁政権から金正恩・与正兄妹独裁政権へ移行した。金正恩労働党委員長の健康状態がかなり悪いことを意味する。6月8日、本コラムでは、与正氏が4日に談話を出して、脱北者が北朝鮮へ風船ビラを送ったことを口汚く罵り、それを黙認した韓国政府に南北連絡事務所の閉鎖や南北軍事合意破棄もあり得ると脅したことを、権力委譲の兆候と指...
【第692回】無数の人命を危険にさらすイージス・アショア停止
国基研企画委員兼研究委員 太田文雄 6月15日、河野太郎防衛相は、山口県と秋田県に配備計画を進めていた地上発射型迎撃システム「イージス・アショア」について、「迎撃ミサイルの発射後に切り離されるブースター(第1段ロケット)を確実に陸上自衛隊演習場に落下させることができない」という理由で、計画を停止すると表明した。 敵の核弾頭搭載ミサイルが日本本土を襲えば、数十万、数百万の...
【第691回・特別版】日本の知略で「手負いの龍」を抑え込め
国基研企画委員兼主任研究員 湯浅博 歴史家のナイル・ファーガソンは、過去のパンデミック(感染症大流行)を振り返って、未知のウイルスが社会の階級間と、民族の間にある既存の緊張を悪化させると指摘する。なるほど習近平中国国家主席は、武漢ウイルスの処理のまずさから拡散を許し、内外の批判にさらされた。そのため「手負いの龍」は、自らの弱みを見せまいと、周囲に対して凶暴さを増してくる。香...
【第690回】憲法審査会は国会の閉会中審査で遅れを取り戻せ
国基研理事・国士舘大学特任教授 百地章 通常国会は6月17日に閉幕するが、野党・立憲民主党などは会期の延長を求めている。これに対して、自民党は必要があれば閉会中審査で対応するという。であれば、懸案の国民投票法改正案をはじめ、一向に審議が進まない憲法審査会も、閉会中審査を行うべきだ。 ●開催を拒み続ける主要野党 自民党、公明党、日本維新の会は本年度予算成立後、速や...
【第689回・特別版】メルケル媚中演説の衝撃
追手門学院大学教授 佐藤伸行 新型コロナウイルスが猛威を振るっていた4月、ドイツ最大の日刊大衆紙ビルトの編集局長が習近平中国国家主席に公開書簡を送り、話題になった。公開書簡は、ウイルスの全世界への拡大は中国に責任があると追及する内容で、「習主席よ、あなたは監視することで国民を統治しているが、なぜあれほど危険な武漢の海鮮市場を監視できなかったのか」「コロナが漏出した疑いのある...
【第688回・特別版】次亜塩素酸水への不当な誤解を解け
国基研理事・東京工業大学特任教授 奈良林直 新型コロナウイルスに対するアルコールなどに代わる消毒液候補について、経済産業省の委託で独立行政法人、製品評価技術基盤機構(NITE)が行ってきた検証試験の中間結果(5月28日付)をめぐり、大きな社会的混乱が発生している。 中間結果の発表を受けて、次亜塩素酸水に消毒の効果がないかのように誤って報道されたのに加えて、文部科学省が次...
【第687回・特別版】進む金与正氏への権力委譲
国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授 西岡力 北朝鮮による拉致被害者横田めぐみさんの父、横田滋さんが天に召された。被害者救出のため、1997年から共に戦ってきた。戦場の私のすぐ横で敵に向かっていた戦友が敵弾に当たって倒れた、という感覚だ。 ●北朝鮮のウソと戦った横田滋さん 滋さんの戦いを一言で表すなら、世論に訴えてウソを打ち破ることだった。平成9年、実名を出...
【第686回】戦闘的自由主義者、塚本三郎
国基研副理事長 田久保忠衛 旧民社党を自民党と旧社会党の中間に位置する政党だったと誤解している向きがいまだに少なくない。とんでもない浅い解釈だ。政党を右とか左といった単純な尺度で分類するしか能がないのか。 春日一幸委員長、塚本三郎書記長時代の1978年に、栗栖弘臣統合幕僚会議議長の解任問題が発生した。日本が奇襲攻撃を受けた場合、首相の防衛出動命令が出るまで自衛隊は動きが...
【第685回】曖昧外交の基は「吉田ドクトリン」
国基研副理事長 田久保忠衛 今から半世紀ほど前に、英誌エコノミストが日本の外交を「柔道外交」と形容し、ちょっとした話題になった。日本外交は押されれば引き、引かれれば前に出る。自分の余計なエネルギーを使わずして、相手を疲れ果てさせる。悪く言えば、外交で原理・原則は二の次、三の次にする好ましくない典型、という響きが込められていたように思う。 ●中国に腰が引ける日本 ...