公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

ジェームスアワー

【第185回】防大卒業生よ、胸を張れ

ジェームスアワー / 2013.03.18 (月)


米バンダービルト大学教授・国基研客員研究員 ジェームズ・E・アワー

 

 防衛大学校の卒業生諸君。
 3月17日に諸君のように若い人材が任官したことで、日本の防衛能力は大きく向上するだろう。私の贈る言葉は、誇りと情熱を持って祖国に貢献せよ、ということだ。諸君は幹部自衛官として、自衛隊員でない国民よりずっと大きな責任を負う職務をじきに与えられるだろう。部下が劣っているなら、その能力を高めるために訓練しなければならない。しかし、幹部自衛官には権限と責任があるので、幹部自衛官が劣っていれば問題ははるかに深刻だ。諸君は最優先の責任として、常に最善を尽くすことに努めてほしい。

 ●究極の犠牲も覚悟せよ
 日本が軍事作戦に関わることは、諸君が生まれてこのかたなかったし、諸君が生きている間はあってほしくない。インド洋・太平洋地域で最高レベルの平和と安全を促進するため、日本は米国と同盟関係を保ち、類似の価値観を持ち志を同じくする諸国と親密な関係を築いてきた。諸君は間もなく抑止力の一翼を担うことになるが、その抑止力は日本の不幸を願う国家や集団を思いとどまらせることができて初めてうまく機能する。抑止がうまくいかなければ、諸君は必要ないかなる犠牲も払うことを覚悟しなればならない。それが究極的な犠牲を意味するとしても、である。
 英語で「卒業」(グラデュエーション)は「コメンスメント」とも言い、それは「始まり」を意味する。この言葉を使う理由は、卒業は教育の終わりではないからだ。卒業は人生の新たな段階の始まりであり、各段階でさらに学ぶことが必要だからである。これは近く制服姿の幹部自衛官になる防大卒業生の場合に特に当てはまる。

 ●自衛隊幹部の祖国貢献は見事
 日本社会において、幹部自衛官であることは戦前の日本軍将校ほど名誉あることではない。しかし、日本の幹部自衛官と友情を深めた私自身の経験から、自衛隊には非常に聡明かつ有能で、その愛国心と祖国への貢献が最高の国際基準に照らしても極めて見事な指導者がいるというのが私の意見である。諸君は今、国家の安全保障に死活的に重要なプロのエリート階級の仲間入りをしようとしている。
 日本国民は国家に貢献する男女の制服組にもっと感謝すべきだが、抑止に失敗しない限り、国民はしかるべき感謝の気持ちを持ちそうにない。しかし、平時であろうと戦時であろうと、また国民に感謝されようとされまいと、諸君の貢献がぐらつくことがあってはならない。
 安倍晋三首相は日本を「二流」の国家にしないと約束した。その目標を達成するには、経済分野でも、そして諸君が今や重要な構成員である防衛分野においても、多大な努力を必要とする。これほど素晴らしい教育を受けて卒業するに当たり、諸君が大変な努力を払ったことをお祝いする。受けた教育を賢く使うなら、将来成果を上げるのに大いに役立つだろう。諸君の卒業がさらなる教育の「始まり」となり、日本の将来への誇りと責任のある貢献の「始まり」となることを希望する。

(本稿は3月17日の防衛大学校卒業式に当たって執筆された)