公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

川村純彦

【第186回】日台関係基本法を早急に制定せよ

川村純彦 / 2013.03.25 (月)


川村純彦研究所代表・国基研客員研究員 川村純彦

 

 3月24日、日本李登輝友の会から「日台関係基本法」の制定を求める政策提言が発表された。安倍晋三首相が示した「海洋における法の支配」など新たな外交5原則とも相まって、まさに時宜に適った提言である。
 我が国と台湾の交流は、その基本となる法律を欠いたまま、外務省と経済産業省所管の公益財団法人である交流協会を通じて、経済、社会、文化などの分野で「非政府間の実務関係」を続けている。
 他方、米国は1979年の台湾との断交に際して台湾関係法を制定し、台湾を中国とは別個の存在とすることで、台湾との外交を行うための法的根拠を保持している。
 アジア・太平洋地域の覇権獲得を目指す中国は、地域の平和と安定にとって最大の脅威となった。その脅威を抑止するため、中国の強引な海洋進出を牽制できる絶好な位置にある台湾と日米同盟の協力は不可欠である。

 ●台湾を無視して海の自由守れぬ
 中国の脅威に対して日台は運命共同体というべき関係にありながら、我が国はこれまで台湾問題について主体的な関与を避け、責任を回避してきた。  
 法的基盤を欠いたままの現状では安全保障分野の交流もできず、極論すれば日本政府が中国からの圧力を極度に恐れた場合、現行の交流も途絶する可能性すらある。今までのような無責任な態度を取り続ければ、日米同盟の絆が弱まり、地域の平和と安定が失われることは避けられない。
 このような事態を防ぐには我が国でも、台湾関係法に基づいて安全保障を含む台湾との関係を維持している米国の政策とも整合性の取れた日台関係基本法の制定が不可欠である。
 また、安倍首相は「海は法とルールの支配するところでなくてはならない」との原則を含む外交5原則を発表した。安倍政権の外交・安全保障政策の基本は、日米同盟を基軸に価値観を共有する諸国と協力して中国の独善的な行動を抑止し、地域の平和と安定を図ることにある。
 台湾についての直接の言及はないものの、台湾の存在を無視しては新しい外交5原則の実現は不可能であり、そのためにこそ以下を骨子とする日台関係基本法の制定を急ぐべきである。

 ●総合的な日台関係を構築
1、我が国と台湾の関係は、もはや経済、社会、文化などに限定した実務関係だけで律することは極めて困難となっており、台湾の地位を法的に明確に規定すると共に、総合的な外交を行うための根拠法規が必要である。
2、我が国の国益増進及びアジア・太平洋地域の安定と発展のために、自由、民主主義、人権、法治等の共通の価値観を基に、平等互恵を原則とする日台間の関係を発展させる。
3、平和的手段以外によって台湾の将来を決定しようとする試みは、いかなるものであれ、我が国及びアジア・太平洋地域の平和と安全に対する脅威となるものであり、我が国にとって重大関心事であることを宣明する。
4、我が国は、台湾関係法に基づく米国と台湾の関係を支持すると共に、海洋を力ではなく法が支配する自由で開かれた公共財として守るため、日米同盟を主軸に台湾と協力する。(了)