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大岩雄次郎

【第242回】「基本」が見えない政府のエネルギー基本計画

大岩雄次郎 / 2014.04.14 (月)


国基研企画委員・東京国際大学教授 大岩雄次郎

 

 政府は4月11日、中長期のエネルギー政策の指針となる「エネルギー基本計画」をようやく閣議決定した。この計画は当初、昨年秋に発表されるはずだったが、幾度となく先延ばしされた揚げ句、その内容も極めて曖昧となった。腰の据わらない政府の姿勢がそのまま内容に表れ、このままでは将来の国益を損なうことが危惧される。

 ●妥協で矛盾だらけ
 エネルギー基本計画の核心は、原発の扱いが全てと言っても過言ではない。しかし、政府は、世論や自民党の一部や公明党の反発を過度に恐れるあまり、原発政策の方向性を明確に示さず、それがこの基本計画の矛盾を生み、計画全体の意義を損なっている。
 今回の基本計画では、「原発ゼロ」方針の転換以外に見るべきものはない。目下の最大の課題である原発再稼働は、既に野田前政権が閣議決定した「革新的エネルギー・環境戦略」(平成24年9月14日エネルギー・環境会議決定)でも「原子力規制委員会の安全確認を得たもののみ、再稼働とする」となっており、政府は速やかにそれを実現する責任があるにもかかわらず、原子力規制委員会に全面的に責任を転嫁し、再稼働に向けた最大限の努力を払っているとは言えない。
 基本計画では、原発を一般水力、石炭、地熱と同様の「重要なベースロード電源」、つまりエネルギー計画の中軸に位置づけながら、原発依存度を「可能な限り低減させる」とし、民主党政権が決めた「40年廃炉政策」の見直しも示されていない。新増設についての方針を確定しないままでは、原発がゼロになるのは時間の問題である。さらに、進行中の「電力システム改革」、つまり電力市場の自由化の中での原発の位置づけも示されていない。結局、個別のエネルギーに言及しているだけで、エネルギーのベストミックスが提示されない基本計画では、中長期的な指針になり得ない。

 ●原発を中核にしてこそ現実的
 今回の基本計画では、原発反対派に過度な配慮をしたため、原発の重要性が曖昧になっている。原発を重要なベースロード電源であると規定する以上、少なくとも古い原発のリプレースを通して原発技術や人材の確保・養成と高速増殖炉研究の継続が必要である。
 そのためには、原発も再生可能エネルギーと同様に、政策によって支えるべき電源に位置づけることが求められる。それこそが、エネルギー自給率の低さに加え、大きな地政学的リスクを抱えるわが国の国益に適う有効なエネルギー安全保障政策である。(了)