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大岩雄次郎

【第270回】安易な脱原発は、国家の安全と国民生活を破壊する

大岩雄次郎 / 2014.10.27 (月)


国基研企画委員・東京国際大学教授 大岩雄次郎

 

 国基研は、2011年3月11日の東日本大震災の発生後、同年10月28日には、「選ぶべきは脱原発ではありません」と題する意見広告を主要各紙にいち早く発表した。東京電力福島第1原発事故は津波が原因であり、安易な脱原発は国家の安全と国民の生活を脅かすことを警告した。今、その危惧が現実のものとなりつつある。今こそ、情緒論に踊らされることなく、わが国の国家の安全保障の見地から、原発の再稼働を実行すべきである。

 ●原発全停止が引き起こす計り知れない経済損失
 震災後、電気料金はすでに、産業用で3割、家庭用で2割上昇したが、電力各社の値上げ幅は原発の再稼働を見込んで圧縮しているため、再値上げが必至である。追加的な発電燃料の輸入額増は年間約3.7兆円前後(2010年度比)に及び、燃料輸入額は10兆円増加(2010暦年比)し、GDP比5.7%を占め石油危機時に匹敵する水準まで悪化している。さらに、再エネ固定価格買取制度の賦課金は、2014年度に総額約6500億円に達するとみられ、今後も増加が避けられない。原発停止に伴う火力発電の増加によるCO2排出量は1.43億トン増加し、日本の総排出量の10%以上となっている。
 これらの経済的負担の増加は、国民生活を圧迫し、企業の国際競争力を低下させ、すでに中小企業の一部倒産を招いている。企業は海外移転に活路を求め、その結果国内投資が減少し、雇用も脅かされる。アベノミクスによる経済回復の流れも頓挫しかねないほどの影響を及ぼす危険がある。

 ●法律に基づく原発の再稼働を
 原子力規制委員会は、民主党・無所属クラブ、自由民主党・無所属の会及び公明党の三会派共同提案の原子力規制委員会設置法案が2012年6月20日に参議院で可決されたのを受けて発足した。原子力規制委員会は、2014年7月18日、東京電力福島第1原発事故で、政府や国会などの事故調査委員会が未解明とした事故の経緯などを分析した検討会で、1号機の電源喪失は、「津波が原因で、地震による影響は考えにくい」とする中間報告案を取りまとめた。これは、民主党野田政権以来「安全性の確認された原発は再稼働させる」ことの正当性をさらに裏付けるものである。
 にもかかわらず、民主党が設置したこの原子力規制委員会が「法律に基づく安全性を確認」した川内原発の再稼働の反対を扇動するような菅元総理や反対のための反対としか思われないグループの行動は反社会的行為そのものである。政府は、毅然とした態度で、法律に基づく原発の再稼働を主導する責任を果たすべきである。(了)