衆院選の結果が判明した。公示直後の12月4日、新聞各紙は軒並み「自民300議席超す勢い」といった見出しで大々的に報道しており、中には衆議院の3分の2を超える317以上の議席を予想するものもあった。しかし、前回並みの議席は獲得したものの、3分の2には及ばず、自主憲法制定を基本政策に掲げる次世代の党なども振るわなかったため、憲法改正の発議を行うためには依然公明党に頼らざるを得ないことになった。
●憲法改正に向けた戦略を
安倍晋三首相は、憲法改正が「私の歴史的使命」と公言しており、憲法制定後60年も放置されてきた憲法改正国民投票法を成立させたのは第1次安倍内閣であった。そして先の第2次安倍内閣では、4年後に投票年齢を18歳以上に引き下げる国民投票法の改正を行っている。
となれば、次の第3次安倍内閣において、本丸の憲法改正実現を目指すであろうことは間違いない。安倍首相は総選挙後の記者会見で「憲法改正は悲願」と述べている。幸い、今回の大勝により、来年の自民党総裁選挙で再選されることは間違いなかろうし、憲法改正に必要な時間も与えられた。残るは、憲法改正に向けた周到な戦略と今後のスケジュールであろう。公明党対策も、慎重に進めていく必要がある。
憲法改正の実現のためには、様々な困難が待ち受けており、これを克服して行くためには国民の高い支持率は不可欠である。それ故、当面はアベノミクスを成功させることによって日本経済を活性化させ、国民を元気づけることが必要である。しかし、前回並みの議席を確保し,自民、公明の両党で改憲の発議に必要な衆議院の3分の2を手中に収めた以上、もっと積極的に憲法改正の必要性を国民に訴えていく必要があろう。
●自民党国会議員の意識改革を
それと共に緊要と思われるのが、自民党国会議員の意識改革である。安倍首相やかつての歴史議連(日本の前途と歴史教育を考える議員の会)のメンバーのように、本気で憲法改正を実現しようとしている国会議員が今回当選した自民党議員の中に一体どれだけいるであろうか。
新人議員の動向はつまびらかでないが、衆議院解散前について言えば、憲法改正に積極的な議員がどれだけいたかは疑問である。中には、自民党の立党精神さえ知らないのではないかと思われる議員も少なくなかった。
自民党は憲法改正に向けて全国で対話集会を始めたが弁士の成り手がなく、船田元・憲法改正推進本部長をはじめとする少数のメンバーが全国を回っている有様であった。筆者も広島と高知の集会に参加させて戴いたが、残念ながら参加者は決して多いとはいえず、憲法改正にかける熱気のようなものも余り感じられなかった。
自民党の結党当時の「政綱」には、「現行憲法の自主的改正」が明記されており、憲法改正こそ自民党の結党以来の目標である。この立党精神を改憲の発議に当たる自民党国会議員に徹底し、意識改革を図ることこそ、憲法改正のため喫緊の課題であると思われる。(了)