日本西端の国境の島、沖縄県与那国島で2月22日、自衛隊配備を巡って行われた住民投票は、85.2%の高い投票率を記録した。受け入れ派が632票、反対派が445票となり、予想を超える187票の「大差」で受け入れ派が勝利した。
配備推進派には、圧勝したからには自信を持って工事を進めればよいとの声もある。しかし、そんな次元で片づく問題ではない。今回の住民投票は、まともな国家ではあり得ないとんでもない投票だった。通常の選挙権を持つ有権者に加えて、中学生以上の未成年者と永住外国人5人にも投票権を与え、国と自治体が正式合意した安全保障政策を問い直すというのだ。これが国家としての異常でなくて、何であろうか。
●中学生、外国人に投票資格
私は現行憲法を是とする者ではないが、国の統治は憲法と法の遵守を基本としなければならないと信じている。今回の住民投票の実施は、憲法と法の精神への挑戦である。
在住外国人に住民投票資格を与えたのは、選挙権を「国民固有の権利」と定めた憲法15条及び、地方自治は住民の直接選挙によって行われると定めた93条の主旨に違反する。最高裁は「住民」を「日本国民」としており、永住外国人は含まれないのである。
国の安全は公共の福祉そのものであり、個人の権利は公共の福祉に反しない範囲で追求できるとした憲法13条の主旨にも反する。また安全保障は国の専権事項である。
中学生41人をはじめ、20歳未満の未成年56人の投票資格は、反対陣営の不条理な要求を入れたもので、常軌を逸している。
●安全保障は国の専権事項
そもそも与那国島への自衛隊配備は外間守吉町長の陳情から始まった。町議会で正式に可決されたにも拘らず、計画が進み始めると、外間氏は自衛隊受け入れに「迷惑料」10億円を要求した。氏の議論の中に、国の防衛や安全保障は殆んど出てこない。
安全保障政策やエネルギー政策が国民の理解を得て遂行されるべきなのは確かだが、これら重要な政策を、地方自治体を信頼してその判断に任せることが妥当なのか。疑問に思うのは当然だ。
現在、少なからぬ自治体で自治基本条例が成立しつつある。内容は自治体によって多少異なるが、殆どの場合、条例を地方自治体の「最高規範」と位置づけ、首長に条例遵守が義務づけられている。加えて、殆ど例外なく外国人には住民投票権、即ち、参政権が与えられている。
国家基盤を揺るがすこうした条例が地方自治体に浸透中なのである。いま、あらゆる意味で中央政府の指導力を強めていかなければならず、政治家の責任はそのことを明確に有権者に指摘することだ。(了)