私も一時使用していたイー・モバイル(移動中でもインターネットができる通信サービスで、端末機器の多くは中国のファーウェイ=華為=社製)や、米マイクロソフト社のオフィス製品(ワードやエクセル等)に似せた中国キングソフト社の安価なソフト、あるいは中国製の安いウイルス対策ソフトは、使用するとパソコン内の情報が中国当局に筒抜けになる危険性がある。
2012年にマイクロソフトは、中国複数都市でサンプル購入した20台のパソコンのうち4台からバックドア(情報を中国当局に転送する機能)やマルウェア(悪意のあるソフトウェア)が検出されたとの調査結果を公表した。幾つもの外国では中国製通信機器・ソフトを使用しないように指示が出ているにも拘らず、日本ではこうした事実が周知されていない。
●諸外国の対応
2012年10月に米下院情報特別委員会は、中国情報通信メーカーの華為とZTE(中興通訊)の製品を組み込んだ電子機器が大量の情報を中国に送信していると非難する報告書を発表した。両社は中国人民解放軍のフロント企業と見られており、オーストラリア政府は同年、自国の国家事業への華為の入札を禁止した。
2013年の米統合歳出・暫定予算延長法では「商務省、司法省、航空宇宙局(NASA)、国立科学財団は中国政府が所有、指示、財政援助する一つ以上の企業体が生産、組み立てを行う情報技術システムを購入してはならない」と定めた。同年、日本のソフトバンクが米携帯電話会社スプリントを買収した際の許可条件には、華為をはじめとする中国製の通信機器を使用しないことなど、対米外国投資委員会による制約が付いている。
インド内務省も2005年に「外国製の通信機器にはスパイウエアが組み込まれている」と警告した。ところが日本ではこうした安全保障上の懸念が全くないばかりか、華為の日本法人は経団連の有力なメンバーであり、ソフトバンクの孫正義社長などは華為製品を絶賛している。
●何故日本では周知されないのか?
2012年の米下院情報委員会報告書は、当時産経新聞が一面で報じ、日経も極めて小さな紙面で報じたが、他紙は全く報道しなかった。こうしたことから、日本では官公庁でも多くの中国製通信機器・ソフトが使用されている。この背景には、低価格落札方式の採用やCOTS(できあいの市販品の使用)政策が影響している。
今年5月に日本年金機構で100万人以上の個人情報が漏洩し、同月には米連邦人事局でも2150万人の連邦政府の職員や元職員らの個人情報が盗まれたことが分かった。特に情報当局関係者の個人情報が中国に漏れれば、その人の弱点(金や異性関係等)に関するデータベースが把握されることから、国家の安全保障にも影響する重大な問題である。(了)