2月7日、北朝鮮が弾道ミサイル発射実験を行った。1月6日の核実験に対する我が国の独自制裁や国連安保理の制裁が発動する前に、これ見よがしに行った金正恩政権の挑発だ。発射中止を求めていた中国政府の面子は丸つぶれだ。
我が国の多くの専門家は、核実験とミサイル実験の動機について、米国と直接交渉し、金正恩独裁体制を守るため、などと解説している。しかし、それは間違っている。北朝鮮の軍事戦略に対する根本的無知が間違いの原因である。
そして、この無知は我が国の安全保障に重大な損害を与えかねない。
●核ミサイル開発の意味
北朝鮮が米国本土に届くテポドン・ミサイルの実験を初めて行ったのは1998年だった。その時、私はその直前に韓国に亡命した北朝鮮空軍の大尉に会いに訪韓していた。私は元大尉に、北朝鮮の軍事戦略における弾道ミサイルの意味を質問した。すると、元大尉は私の顔をじっと見つめて、「あなたは北朝鮮問題専門家ではないのか。なぜそのような基本的なことを知らないのか」と詰問した。
元大尉は「北朝鮮軍人にとって、それは自明だ。1950年に北朝鮮の奇襲攻撃で始めた朝鮮戦争で勝てなかったのは、在日米軍基地から米軍が出動したからだ。次に戦争をする時は、奇襲南侵をして米本土から援軍が来るまでの間、在日米軍基地を使用不能にすれば勝てる。そのために、在日米軍基地を直接攻撃できるミサイルを持つと同時に、ワシントン、ニューヨーク、ロサンゼルスなど米本土を攻撃できる核ミサイルを持って、米世論の反戦感情を喚起して、在日米軍の参戦を阻止できれば勝てるという戦略を士官学校時代から一貫してたたき込まれた」と語った。1997年に韓国に亡命した元朝鮮労働党書記の黄長燁氏もほぼ同じことを話している。
●日本の核オプション
北朝鮮が核ミサイル開発を始めたのが1950年代であり、それを本格化したのは1960年代だ。金日成主席は朝鮮戦争での在日米軍の戦略的意味を痛感して、それを無効化すれば勝てるという信念で、核ミサイル開発を始めた。金正日総書記は人口の15%に当たる300万人以上を餓死させながら、核ミサイル開発を継続した。金正恩第一書記も、外交で最も重要な中朝関係を犠牲にして、核兵器とミサイルの実験を続けている。
だまされてはならない。北朝鮮は第2次朝鮮戦争を起こして韓国を赤化併呑するために米本土まで届く核ミサイルの開発を続けているのだ。それはまだ完成していないが、技術的課題を一つ一つ解決するため3年に1回のペースで実験を続けている。いくら国連が制裁しても、中国が怒っても、それはやめない。
北朝鮮には、核抑止力の強化以外に対策はない。具体的には、北朝鮮が核ミサイルを発射したら、独裁者を必ず殺すことのできる能力を持つことだ。韓国保守派の中には、日韓が核武装すべきだという議論が出ている。1月12日の「今週の直言」で私は我が国の核武装を提言したが、タブーを排してその議論を本格化すべきだと再度強調したい。(了)