公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

太田文雄

【第381回】中国軍艦の尖閣接近を常態化させるな

太田文雄 / 2016.06.13 (月)


国基研企画委員 太田文雄

 

 6月9日未明に中国海軍のフリゲート艦が尖閣諸島の接続水域(領海の外側12カイリの水域)に進入した。1992年に中国が設定した領海及び接続水域法第2条第2項は尖閣諸島を中国の領土と規定しており、さらに同法第13条は「中華人民共和国は接続水域内において(中略)管轄権行使の権限を有する」としている。従って、今回のようにロシア海軍艦艇3隻が「中国の領土」としている尖閣諸島の接続水域に進入した場合、中国の法律と論理によればロシアに抗議すべきであるのに、9日出された中国国防省の声明に、それはない。中国の狙いは何だったのだろうか?

 ●領海侵入・実効支配の一歩手前
 2008年12月8日、中国海監総隊(現在の海警局)の公船2隻が尖閣諸島の魚釣島領海内を約9時間半にわたり周回した時、日本の新聞各紙は翌日一面トップで報じた。しかし、今月初旬の時点で中国公船の尖閣諸島領海侵入は既に150回を超えているにもかかわらず、新聞はほとんど報道しなくなった。
 また、昨年末から中国は砲を搭載した海警局の公船を尖閣諸島の領海に侵入させている。これも当初は大きなニュースであったが、今では常態化している。そして、今回は軍艦の接続水域進入、次には領海への侵入といった具合に、中国はサラミを少しずつ切るように行動をエスカレートさせ、それを既成事実化しようとしている。
 中国が南シナ海などで他国の島嶼を奪う手口は、①領有権の主張(尖閣諸島の場合は1971年)②先兵としての漁船の領海侵入(同1978年)③公船の領海侵入(同2008年)④海軍艦艇の領海侵入⑤実効支配―の順に行われてきた。今回、中国のフリゲート艦が接続水域に入ったことから、軍艦の領海侵入、そして実効支配の一歩手前まで来ていることを認識する必要があろう。

 ●次は沖縄に触手
 2013年5月8日、中国共産党機関紙・人民日報は、沖縄の帰属は未解決であるとの専門家の論文を掲載している。中国が尖閣諸島を実効支配すれば、次は沖縄に触手を伸ばすのは火を見るよりも明らかである。
 ここで私は問いたい。
 米兵や軍属が引き起こした事件、事故を理由に「米軍基地の完全撤去」を叫ぶ沖縄の皆さん、米軍の抑止力なしで中国の沖縄侵略を防げますか? 中国共産党一党独裁の下では、皆さんは自由なデモすらできなくなりますよ。
 日米同盟を強化するための安全保障関連法の廃止を主張し、自衛隊に至当な地位を与える憲法改正に反対する政党の皆さん、中国の侵略を憲法9条で阻止できますか?(了)