12月2日、わが国政府は9月に核実験を強行した北朝鮮に対する追加独自制裁措置を決め、在日の核ミサイル技術者と在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)幹部の再入国禁止対象を拡大した。新たな対象者の人数と名前は公表されなかったが、私の調べでは、核ミサイル技術者が1人、総連幹部が6人追加された。その核ミサイル技術者は朝鮮大学校の李時求元教授だ。
●再入国禁止、新たに7人
日本政府は2月に独自制裁を行っているので、1年に2度目の制裁実施となる。前回は自民党拉致問題対策本部が昨年準備した13項目の追加制裁案を基に、かなり厳しい制裁が実行された。今回は、①再入国禁止対象の追加②北朝鮮に寄港した日本籍船舶の日本入港禁止③資産凍結の対象となる北朝鮮の核・ミサイル計画等に関連する団体・個人の拡大―の3つが決定された。このうち、②と③は形式的なもので、問題は①でどの程度、対象が拡大されたか、だった。
2月の制裁では、京都大学原子炉実験所の卞哲浩准教授を含む5人の核ミサイル技術者と、許宗萬議長をはじめとする17人の総連幹部に対して、北朝鮮を渡航先とする再入国禁止、すなわち、北朝鮮に渡航した場合に日本への再入国を拒否する措置を取った。政府は再入国禁止者リストを公表しなかったが、私は本欄などで実名を公開して、日本の国立大学などが北朝鮮の核ミサイル開発技術の供給基地になっていることを告発した。
私の告発を基に国会で政府を追及する論戦があったが、現職の准教授が制裁対象になった京都大学や文部科学省は現在までいかなる措置も実施していない。
●都知事は朝大の認可を取り消せ
今回の制裁では、自民党は総連の地方幹部らを含む中央委員全員を再入国禁止リストに加えることを求めたが、それは実現しなかった。
追加された核ミサイル技術者の李時求元教授は1924年生まれ。京都大学を卒業し、大阪大学大学院で日本の原子力研究の第一人者、伏見康治博士の下で原子物理学を学んだ。総連が運営する朝鮮大学校の教授を長く務め、初代の在日朝鮮人科学技術協会(科協)会長として、北朝鮮の核ミサイル開発に積極的に協力してきたことで知られている。1986年には、宇宙工学の権威で東大名誉教授の故糸川英夫氏を、87年には伏見博士をそれぞれ北朝鮮に招待した。
私は北朝鮮拉致被害者支援組織「救う会」会長として9月に小池百合子東京都知事と面会した時、朝鮮大学校の各種学校認可取り消しを検討するように要請した。今回、元教授が制裁対象になったことは、朝鮮大学校が北朝鮮の核ミサイル開発への技術提供の基地になっていたことを意味する。
東京都は、李時求元教授をはじめとする朝鮮大学校関係者の対北技術協力の実態を徹底的に調べ、昭和43年、当時の美濃部亮吉知事が政府の制止を無視して行った各種学校認可を取り消すべきだ。(了)