国基研企画委員・東京基督教大学教授 西岡力
鳩山政権に対する北朝鮮の政治攻勢が活発化している。朝鮮総連が民主党の地方組織や、支持組織である労組などへ働きかけを強めている。それと連動する形で、蓮池透・家族会前副代表が取り込まれ、全国を回って制裁解除と早期国交正常化を求める世論作りの先頭に立っている。北朝鮮の工作を甘く見てはならない。
総連へ「民主党攻略指令」
北朝鮮の対日政治攻勢をまとめておく。
7月上旬、朝鮮労働党の対外工作機関「225」(旧対外連絡部)から朝鮮総連に「民主党の支援組織の労組の影響力を使え」「在日朝鮮人の人権問題として(万景峰号入港)禁止措置解除を働きかけよ」とする「民主党攻略指令」が出された。
9月11日、総連中央委員会総会で「与野党をはじめとする政界、言論界など各界の人士と多くの社会団体との事業を強化し、朝日関係改善と国交正常化を求める社会的世論を大きく喚起する」「人道の船・万景峰号の入港禁止と在日朝鮮人の再入国規制、総連関連施設に対する固定資産税減免撤回と輸出入の全面禁止をはじめとする不当な制裁措置を撤廃させるための闘争を頑強に展開する」などの方針を決めた。
9月17日、午後4時から5時半頃まで国会衆議院第2議員会館前で、在日朝鮮人青年同盟の約50人が制裁解除を求めてアピール活動を展開した。同日は、7年前金正日が拉致を認めて謝罪した日である。
蓮池透氏が全国講演
蓮池透・家族会前副代表をメーン講師とする「日朝友好の集い」が、10月10日北九州、11日福岡、12日長崎と3日連続で開催された。11日の福岡集会は、福岡県日朝友好協会(昨年5月発足)が主催、自治労福岡県本部・福岡県教職員組合・部落解放同盟福岡県連・自治労福岡県職員労働組合などが協賛、松本龍民主党衆院議員、山崎拓・前自民党衆院議員などとともに朝鮮総連福岡県本部委員長の李周学があいさつ。蓮池氏は講演の中で、対話路線を重視すべきであり、過去の清算を日朝平壌宣言に則ってすすめ、それをテコに物事を推し進めるべきだ、などと、安倍政権以来の「圧力と対話」路線を強く批判した。
10月16日、東京で金正日の統一政策を支持する国際大会が開催された。総連が朝鮮学校の生徒、朝鮮大学校の学生らに動員をかけたが、当初言われていた1000人には届かなかった。家族会など拉致と人権関係のNGOや有志、民団など約300人が会場前で抗議行動を展開。与野党政治家の出席、メッセージはいっさいなく、出席予定であった和田春樹東大名誉教授は姿を見せなかった。(了)
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第9回:活発化する北朝鮮の対日攻勢―家族会元副代表が世論作りの先頭に(西岡力)