公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

【第12回】首相は政治資金問題で説明を拒むな

h0330 / 2009.11.09 (月)


産経新聞首相官邸キャップ 阿比留瑠比

鳩山政権が発足して2カ月弱がたってみて、つくづく感じるのは、鳩山由紀夫首相の甘ったれぶりの度し難さだ。それは、自分でも中身をきちんと説明できない曖昧模糊あいまいもことした東アジア共同体構想への固執や、「対等」を強調する一方でやるべきこともやらずに時間稼ぎに明け暮れる対米外交にも如実に表れている。根拠もなく「僕の気持ちはきっと分かってもらえる」と信じているのだろう。

中でも、鳩山首相自身の政治資金問題をめぐる言動は、まるで親の庇護ひごの下、何をやっても他人のせいにして許されると信じている幼い子供の姿のようだ。

見逃せない脱税疑惑
この問題に関しては、もともと自分の金なのだから大目に見てもいいという優しい見方もあるようだが、とんでもない。この問題は、政治資金を透明化して国民の監視にさらし、その判断に委ねるという政治資金規正法の精神そのものを踏みにじるものだ。また、故人・匿名献金だけでなく、7200万円もの申告漏れも発覚、意図的な脱税の疑いも濃厚となっている。鳩山家の家族ぐるみの犯行の可能性もあり、見逃せる話ではない。

第一、首相は過去にはこう語っていた。綸言りんげん汗のごとし、とはまさにこのことだ。
「言うまでもなく、秘書の罪は国会議員の罪」(平成14年3月、加藤紘一元自民党幹事長の秘書による脱税容疑について)
「議員の分身といわれている会計責任者の逮捕は、議員本人の責任」(平成14年5月、鈴木宗男衆院議員の業務妨害容疑での秘書逮捕について)
「私は政治家と秘書は同罪と考えます。秘書が犯した罪は政治家が罰を受けるべきなのです」(平成15年7月、土井たか子元衆院議長の秘書による秘書給与流用事件で)

それが現在では「すべて会計実務担当秘書の独断」と責任逃れをし、説明を拒む始末だ。11月6日の参院予算委員会でも『青天のへきれき。残念でならない』とひとごとのように答弁したが、議員と秘書は同罪としていた自分自身の過去の発言とどう整合性をとるのか。
 
弟邦夫氏も「告発」
鳩山首相の実弟の鳩山邦夫元総務相は8月の講演でこうはっきりと指摘している。
「兄は表にできない裏献金ばかりいっぱい受けている。恥ずかしいから勝手に死んだ人の名前も借りた。しかも、あっという間にもみ消し工作をやった。脱税もやっている」

身内からさえ「告発」されたのだから、自ら国民に説明する姿勢を見せてはどうか。(了)
 

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第12回:首相は政治資金問題で説明を拒むな(阿比留瑠比)