「ドナルド・トランプ米大統領のアジア歴訪が終了する11月中旬以降、米軍の準備が整えば、北朝鮮問題で何が起きても驚かない」と、政府要人が現状を分析した。
日本も極東も、高まり続ける緊張の中にある。10月22日の総選挙後に成立する内閣は、北朝鮮有事、中国の野望、米国の対日政策の変容に対応し、物理的、法的に国防力の強化を進めなければならない。
●迫る北朝鮮有事
いま、有事が発生したとして、わが国の法制は自衛隊の北朝鮮上陸及び拉致被害者救出に、①当該国(北朝鮮)の了承を得ること②当該国の状況が平和であること③当該国の国軍と協力すること―の3条件を課しており、事実上自衛隊は動けない。
有事の際、5万~30万人の難民が南北両朝鮮から北九州、さらに日本海沿岸の鳥取、島根、福井、新潟などに押し寄せると予測される。警察だけでは対処できず、陸上自衛隊が主軸となって仮上陸させ、衣食住を手当し、感染症対策などを施して、社会の安全を維持しなければならない。難民の中に危険人物が混じっている可能性もあり、身元調査は欠かせない。これだけの任務をわずか14万人の陸上自衛隊が担えば、本来の国防の任務はおろそかにならざるを得ない。
それでなくとも日本本土の守りはおぼつかない。小野寺五典防衛相は9月8日、「日本は北朝鮮のミサイル発射を捕捉できない。独力では、ミサイルが日本上空に接近してからでないと把握できず、遅すぎる」と語った。
ミサイル防衛を強化する陸上配備型イージスの2基導入で日本全域の守りは可能だが、実戦配備に3年かかる。
今年3月、自民党は「敵基地反撃能力の保有」を求める提言を発表したが、敵基地の位置の把握、それを守るレーダーサイトの無力化、精密誘導ミサイル等による攻撃など、必要な装備体系は日本になく、その保有計画もない。完全に米国頼みの脆弱な国防体制を、米国と協調しつつ、変えていくことが日米両国の国益だ。
●政権選択選挙の争点は国防
次期政権の責務は、従って、近未来の大きな目標を憲法9条2項(戦力不保持)の削除に置き、その過程でまず専守防衛の考え方を変えることだ。基地反撃能力の保有は合憲であり、早急に整備すべきだ。
総選挙は安倍晋三総裁(首相)の自民党か、小池百合子東京都知事の希望の党かを問う政権選択選挙となる。争点は国防だ。
希望の党は民進党左派を排除したとしても、民進党のリベラル志向を色濃く反映している。私は東日本大震災における当時の民主党政権の対処を思い出さずにいられない。未曾有の自然災害の前で、誰も完璧な対処など要求はしない。だが、当時の政権幹部でいま希望の党の主軸となった人々は、許容できる放射線量を年間1ミリシーベルト以下と認定した。あまりに非科学的かつ厳しい基準設定がその後の福島の復興を妨げた。
また9月1日の民進党代表選挙のときまで、安保法制の廃止を要求していた。いま彼らは希望の党で安保法制は必要だというが、如何にして信頼すればよいのか、疑問が残る。(了)