11月6日、来日中のトランプ米大統領が北朝鮮による拉致被害者家族会メンバーと面会した。大統領は、愛する肉親を北朝鮮に奪われて40年も会うことができない拉致の深刻さについて、当事者の説明を真剣に聞いて深く理解し、「安倍晋三首相と協力して被害者が家族の元に帰れるよう努力する」と明言した。
早ければ年末から来年にかけて軍事衝突さえも想定される北朝鮮情勢の中で、米国本土まで届く核ミサイル開発を止めることを国益とする米国の大統領が、外国人である日本の拉致被害者家族と会ったことは、北朝鮮の金正恩政権に対する強い圧力になると同時に、米国が日本の頭越しに北朝鮮と妥協をして拉致問題を置き去りにすることを防ぐ大きな布石となった。安倍政権の外交と超党派の国会議員の活動、そして我々民間の国民運動の大きな成果だ。
●膝と膝突き合わせ
東京・元赤坂の迎賓館での面会は20分の予定だったが、35分ほどに延長された。参加した家族会メンバーは全国から集まった10家族、17人だった。面会は安倍首相夫妻がトランプ大統領夫妻を案内して入室してきて始まった。大統領夫妻は起立して迎えたメンバー一人ひとりと握手しながら、拉致状況などの紹介を受けた。
その後、車座に座って懇談が行われた。大統領夫妻と首相夫妻が正面に座り、向かい側、手を伸ばせば届くくらい近くに、発言の機会が与えられた横田早紀江さん(拉致被害者横田めぐみさんの母)、飯塚繁雄さん(同田口八重子さんの兄)、曽我ひとみさん(母の曽我ミヨシさんと共に拉致された被害者本人)、有本明弘さん(同有本恵子さんの父)の4人が座った。横田早紀江さんの左横に横田拓也さん(めぐみさんの弟)が、飯塚繁雄さんの右横に飯塚耕一郎さん(田口八重子さんの長男)が座って写真を持ってサポートした。4人を取り囲む形で外側に他の家族が座った。まさに膝と膝を突き合わせる面会だった。
●心揺さぶられた大統領
早紀江さんがめぐみさんの拉致に言及した大統領の国連演説のお礼を言い、めぐみさんについて話す間、大統領は拓也さんが掲げていた早紀江さんとめぐみさん、2人の弟が仲良く歩いている写真を手に取り、夫人と一緒にじっと見詰めていた。飯塚さんが田口さんは1歳と2歳の子供を残して拉致され、1歳だった息子が40年経ってこのような大人になったと耕一郎さんを紹介すると、大統領夫妻は驚き、心を揺さぶられたようだった。大統領は曽我さんに「帰って来られてよかったですね」と話しかけ、曽我さんは「大統領にもお母様がいらっしゃると思います」と言いながら、まだ帰ってこない母への思いを語った。
大統領は被害者に関する話を真剣に聞きながら、怒りを抑えているような厳しい表情をしていた。愛する肉親を家族から奪うという拉致は、どの文化においても許しがたい悪だ。未曾有の北朝鮮危機の中、トランプ大統領が行うぎりぎりの決断において、今回の面会で打ち込まれた悪への怒りが大統領の心の奥底で作用することを祈っている。(了)