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大岩雄次郎

【第486回】日本は法人減税に頼らず企業競争力向上を

大岩雄次郎 / 2017.12.18 (月)


国基研企画委員・東京国際大学教授 大岩雄次郎

 

 トランプ米大統領が公約した約30年ぶりの大幅な税制改革は、今週中にも上下両院で法案が可決される見通しである。各国が注目する法人税は2018年に現行の35%から21%へ引き下げられ、全体の減税規模は過去最大の10年間で1.5兆ドルと見込まれている。その財源は、減税による米経済の成長加速で得られる将来の歳入で賄うことを想定している。

 ●減税では成長を加速できない
 今回、共和党が提出した税制改革法案は、大型法人減税を中心に据えているが、トランプ大統領が「大きなクリスマスプレゼントになる」と述べているように、その主な狙いは減税による需要拡大である。一般に、減税は可処分所得の増加による個人消費の活性化や企業の設備投資の喚起を通じて、成長率を短期的に押し上げると考えられている。しかし、重要なのは、需要より供給の拡大を実現する税制改革である。つまり、生産性改善や資本ストックの伸び率加速により、潜在成長率を押し上げることが期待されるものである。米国の潜在成長率の引き上げに必要なのは、正に後者の税制改革である。
 トランプ大統領は、減税政策により米経済成長率は4%以上に高まるとの見通しを示しているが、イエレン連邦準備制度理事会(FRB)議長は同調せず、先の連邦公開市場委員会(FOMC)の長期予測は1.8%で据え置かれた。大型減税や財政支出の拡大は、短期的には国内総生産(GDP)成長率を押し上げるだろうが、潜在成長率は高まらず、好況は短命に終わる公算が大きい。トランプ大統領の政策に対する期待の失速がもたらす反動に備えておくことが必要である。

 ●大きいドル還流の影響
 今回の大幅な法人税率引き下げによる内外企業の米国内投資増加が米経済を刺激し、FRBの金利引き上げを促し、ドルの米国への還流を加速させる可能性は高い。
 回復軌道に乗りつつある欧州諸国は依然巨額の負債を抱えているため、一層の減税政策で米国に対抗することは容易でない。
 中国は、2015年から2016年にかけて大量の資本流出の経験から資本規制の強化を図ってきたが、長期的には、今回の米国の税制改革がインフレと金利上昇によるドル還流の流れを引き起こす時には、中国一国の金融政策で対中投資の減少を止めるのが困難であるばかりか、米国への「リショアリング」(事業拠点の国内回帰)を加速させる可能性も高まる。
 また、最高税率の法人税で米韓が逆転し、来年には金利の逆転の可能性も見込まれる韓国への影響も小さくない。その他の新興国や途上国にとって、ドルの米国回帰の影響は計り知れない。
 日本としても、法人税引き下げ競争に頼らず、生産性の向上を通して企業の競争力の改善を図ることが喫緊の課題である。(了)