安倍晋三首相が2月9日の平昌五輪開会式に出席するため訪韓すると発表した。文在寅韓国大統領との首脳会談も同日持たれるという。北朝鮮は、経済制裁と軍事圧力が効いてきたから文政権に接近してきた。これは想定内で、安倍首相は文政権が北の「逃げ道」を提供しないようにすることが大切だ、訪韓前に、まず東京へ来るペンス米副大統領と対北朝鮮圧力強化路線を再確認した上で、文大統領に日米でそのことを伝えるつもりだ、と安倍首相は関係者に語っている。
米国から、文政権が対北朝鮮圧力を弱める恐れがあるので、そんなことをするなと釘を刺して欲しいという趣旨の依頼があったとの報道がある。慰安婦問題で日本の対韓世論が悪化する中、安倍首相が訪韓を決断した理由はここらへんにあるのだろう。
●五輪前日に建軍式典
確かに制裁は効いてきた。すでに、今年に入り平壌では、中国から良質のコークスが入らなくなり、国産の低質石炭しか使えず、火力発電所が10日以上稼働停止した。また、配給も米がなくなりトウモロコシだけになったという。米軍は今年に入りグアムに戦略爆撃機のB2とB52を新たに配備して、軍事圧力を一層強めた。
しかし、北朝鮮も平昌五輪を政治的に活用するため綿密に計画を立てている。1月22日、突然、2月8日を「朝鮮人民軍創建日」とし、多彩な行事を行うと発表した。1948年2月8日、金日成(北朝鮮建国者)が正規軍を創設したことを記念するというのだ。そして、1932年に金日成が抗日軍を創設したという虚偽に基づく従来の建軍記念日、4月25日は「朝鮮人民革命軍創建日」と改称された。
ここから分かるのは、北朝鮮は建国(48年9月)より先(48年2月)に正規軍を作った究極の先軍国家だということだ。従来、北と韓国内左派は南北分断の責任が48年8月に南のみで建国した李承晩(韓国初代大統領)にあるとしてきたが、軍を先に作った金日成にこそ分断の責任があることが今回明確になった。
●対北抗議が必要
北朝鮮は平昌五輪開会式の前日に大規模な軍事パレードを行い、そこで「国家核武力完成」を建軍70年の成果だと宣伝し、翌日、統一旗を掲げて開会式に入場する北代表に対して文大統領、安倍首相、ペンス副大統領らが拍手を送るという罠を仕掛けてきたのだ。参加する北朝鮮選手の中にメダルを取ることができる者はほとんどいない。彼らは開会式のために平昌へ送られるのだ。
北朝鮮の独裁者金正恩氏は今年の「新年の辞」で平昌五輪への参加を表明し、融和ムードを演出したが、同じ新年の辞で「(今年は)金日成同志が朝鮮人民革命軍を正規の革命武力に強化、発展させた70周年に当たる」と述べて、軍事パレードを行う布石を打っていた。
安倍首相は北朝鮮の軍事パレード実施に抗議し、文大統領にも抗議に加わるよう求めるべきだ。すでに米国の駐韓代理大使は、軍事パレードは「五輪精神を汚染させ国際社会への挑戦だ」と抗議している。(了)