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櫻井よしこ

【第505回・特別版】政治家は改憲の歴史的使命を果たせ

櫻井よしこ / 2018.03.26 (月)


国基研理事長 櫻井よしこ

 

 3月25日の自民党大会が発した本質的な問いは、危機に当たってわが国の政治家、政党、メディアには、国と国民を守る気概はあるのかということだった。
 安倍晋三自民党総裁(首相)は憲法改正を強く訴え、「憲法にしっかりと自衛隊を明記し、違憲論争に終止符を打つ」よう呼びかけた。党大会で、財務省の文書書き換え問題などをめぐって首相の責任を問う声はほとんどなく、首相演説に賛同の声が上がった。

 ●憲法を政局に利用するな
 自民党の憲法改正素案は、①自衛隊の明記②緊急事態条項の設置③参院選における「合区」の解消④教育の充実―の4項目である。
 焦点の9条については、現行の1項と2項を維持して、「9条の2」を設ける。9条の2では、「(9条の規定は)我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げ」ないとし、「そのための実力組織として」「自衛隊を保持する」とした。議論の段階で提案された「必要最小限度の(実力組織)」という文言は削除されたが、自衛隊は9条2項の禁ずる「戦力」ではなく「実力組織」とされた。
 誰が考えても、この改正素案は目指すべき理想の憲法や安全保障の在り方には不十分だ。しかし、理想を求める余り、いま、1ミリも動かないことは、眼下の国際情勢の厳しさを考えれば無責任の極みである。公明党は与党の一翼を担う責任政党として、その点を深く自覚すべきだ。
 他方、野党の多くは憲法改正より学校法人森友学園への国有地払い下げ問題をめぐる財務省の文書書き換えの責任追及が先だというが、国家の在り方の根本にかかわる憲法を眼前の政局に利用することは断じて慎むべきだ。

 ●日本を守るのは日本
 米国は国務長官にマイク・ポンペオ中央情報局(CIA)長官を、国家安全保障担当大統領補佐官にジョン・ボルトン元国連大使を起用した。北朝鮮政策で強硬路線へと軌道修正が図られる可能性がある。またトランプ大統領は、中国同様、日本にも安全保障を理由に鉄鋼とアルミニウムの輸入制限を発動した。国際社会において、永遠の真理は国益だけだということである。
 軍事、経済両分野で混乱が予想される中、米中関係の緊迫化はあり得るにしても、二つの大国の動きは複層的である。中国政府を代弁する「環球時報」は3月9日、朝鮮半島の非核化と平和について、米国への歩み寄りを示唆する論考を掲載した。米中が朝鮮半島をめぐって合意する可能性を改めて想起させるものだ。
 日本周辺の政治、軍事状況の大きな変化の中で、いまのままでは日本が自力で日本を守り通すことは不可能だと認識すべきだ。だが、国民を守り日本国を守るのは、日本国でしかあり得ない。だからこそ日米安保体制の強化とともに、国としての力を強めなければならない。そのための憲法改正である。
 わが国は北朝鮮の危機、中国の膨張、米国の変化に直面しているのである。わが国の安全を「平和を愛する」国際社会の「公正と信義」にすがり続けて70年、一国平和主義の気概なき在り様を変える歴史的使命を果たすのが責任ある政治家、政党、メディアの役割だ。(了)