公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

田久保忠衛

【第506回】「日米韓」対「中朝」の対立復活へ

田久保忠衛 / 2018.04.02 (月)


国基研副理事長 田久保忠衛

 

 4月から5月にかけて日米、南北、米朝首脳会談が相次いで行われる。情報が錯綜さくそうしている今、状況をどう整理したらいいか明言はできないが、3月26日に北京で中国の習近平国家主席と北朝鮮の金正恩労働党委員長が初の会談を行ったのを契機に、北朝鮮を包囲していた日米韓中の結束がほころび、「日米韓」対「中朝」の対立に戻ったと見ていいのではないか。

●米の威圧感に屈した北朝鮮
 中朝首脳会談が急きょ実現したのは、双方に相手を必要とする事情が生じたからである。北の指導者を北京に走らせたのは、第一に中露両国を巻き込んだ国連制裁措置が実際に効いたからだろう。トランプ米大統領と安倍晋三首相が一体となって「最大限の圧力」を北に加えた結果、苦痛が目に見えるような形で現れ始めた、と昨年9月に北を訪れたニューヨーク・タイムズ紙のコラムニスト、ニコラス・クリストフ氏が明らかにしている。米国の軍事行動の脅しも強力な圧力になっている。
 「ディール」(取引)を得意とすると公言しているトランプ大統領は、国務長官にマイク・ポンペオ氏、国家安全保障担当大統領補佐官にジョン・ボルトン氏という2人の強硬派をそれぞれ起用した。かつてポンペオ氏は北の最高指導者の意思と能力を切り離せと述べた。米国の安全を脅かす者の暗殺を公言したことになる。ボルトン氏は北への先制攻撃を正当化する文章を新聞に書いた。米側のトリオが醸し出す威圧感に金委員長が平気でいられるとは考えにくい。

 ●米朝接近を恐れた中国
 トランプ政権の強い慫慂しょうように屈した形で中国は対北制裁に踏み切ったものの、肝心の米国は中国への態度を和らげるどころか、米国と台湾の間で安全保障関係を含む全ての閣僚の往来や会談を認める台湾旅行法を成立させてしまった。しばらく見送ってきた南シナ海における米海軍の「航行の自由」作戦も再開した。中国の知的財産権侵害を狙い撃ちした制裁は、600億ドル(6.3兆円)相当の中国製品を対象とするすさまじいものだ。
 米朝首脳会談がどうなるかは現時点で予想の限りではないが、中国としては、米国と多方面で対立する中で米朝両国が少しでも接近するのは恐怖以外の何物でもない。1986年10月にアイスランドのレイキャビクで、当時のレーガン米大統領とゴルバチョフ・ソ連共産党書記長が会談した。ソ連側が予定になかった米国の戦略防衛構想(SDI)を議題にしたのをレーガン大統領は怒り、会談は決裂した。が、これをきっかけに冷戦は終えんへ向かった。中国は「レイキャビク後」も気にしているのかもしれない。(了)