4月30日から5月5日まで、北朝鮮による拉致被害者家族会、救う会、拉致議連が送った合同訪米団に、私も救う会副会長として参加した。
国際的な経済・軍事圧力の高まりで苦しくなった北朝鮮が、経済制裁の緩和を狙って微笑外交を仕掛け、韓国、中国などがそれを後押しする動きを見せ始めている。倫理感を欠くこれら勢力の動きにいかに対抗するか。北が核ミサイルを放棄するまで圧力を緩めてはならないのはもちろん、外国人拉致を含む人権問題が忘れられてはならない。
●変化の指標は政治犯釈放
ニューヨークにおける日本政府主催のシンポジウムでは、姉を北朝鮮に拉致された横田拓也氏、母を拉致された飯塚耕一郎氏と、息子オットー青年が北で虐待され死亡したワームビア夫妻が並び、連帯して闘う姿勢を明確にした。
独裁体制が真に良い方向に転換し始めたか否かを知るメルクマールが政治犯の釈放である。旧ソ連のゴルバチョフ政権もミャンマーのテイン・セイン政権も、政治犯釈放を行った時点で改革への意志が本物であると認識できた。
逆に、それがない「改革開放」に対し外国が安易に経済支援を開始し、ファシズム体制を怪物化させてしまった悪しき例が中国である。北朝鮮についても、拉致被害者全員と無数の北朝鮮人版オットー青年を解放するまで、経済制裁緩和や開発援助を始めてはならない。
米朝首脳会談でトランプ大統領に拉致問題解決をいかに迫ってもらうか。基本的に日本は「安倍晋三首相が納得する形で拉致問題が解決されるまで制裁を緩和してはならない」と主張し、米国がその線を守ってくれれば十分だろう。後は日朝間で詰めるべき問題となる。
●数カ月内の核放棄迫れ
訪米団がワシントンからニューヨークに移動した間も、私はワシントンに残って、「リビア方式」(2003年12月にリビアが大量破壊兵器の廃棄に同意し、約3カ月で関連機材・物資のほぼ全てを海外へ搬出した)を米側で担った当時の国家安全保障会議(NSC)上級部長ロバート・ジョゼフ氏や、その下で首席補佐官を務めたフレッド・フライツ氏と意見交換した。
ジョゼフ氏は、リビアも核放棄と制裁緩和の同時進行を求めたが、米国ははねつけ、その間、軍事攻撃の可能性を高圧的に口にし続けた結果、最終的にリビアの最高指導者カダフィ大佐が折れたと語った。北朝鮮に対しても「数年かけて徐々に廃棄」などと妥協してはならず、数カ月以内の全面廃棄を迫り、受け入れなければ席を立つ姿勢が大事だと言った。リビアには、テロの放棄も制裁解除の条件として明示したという。
ジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)の参謀役で政権入りが確実視されるフライツ氏は、仮にトランプ政権がブッシュ政権(2代目)のライス国務長官、ヒル国務次官補のような対北朝鮮宥和外交に堕した場合、ボルトン氏も自分も確実に辞職するが、恐らくそんな展開にはならないだろうと自信を見せた。
日本政府は、ならず者国家相手の外交経験豊かなこれら「強硬派」としっかり連携すべきだろう。(了)