公益財団法人 国家基本問題研究所
https://jinf.jp/

今週の直言

  • HOME
  • 今週の直言
  • 【第568回・特別版】政府は、成長戦略の1つ、原発輸出・エネルギー政策を強靱化せよ
奈良林直

【第568回・特別版】政府は、成長戦略の1つ、原発輸出・エネルギー政策を強靱化せよ

奈良林直 / 2019.01.21 (月)


国基研理事・東京工業大学特任教授 奈良林直

 

 1月18日、日立製作所(以下、日立)の取締役会の決定を経て、日立が英国のアングルシー島で進める2基の原子力発電所新設計画を凍結する方針を公表した。総事業費約3兆円のうち、2兆円を英国が準備したが、残り9000億円の日本側出資が集まらなかったためだ。原発輸出は、第二次安倍政権の成長戦略の1つに掲げられていたが、東芝-ウエスチングハウス(WH)の米国での建設遅延に伴う1兆円の赤字負担で撤退し、稼ぎ頭の東芝メモリを売却。三菱重工がフランスのアレバ(現フラマトム)とのトルコへの4基の原発輸出で総事業費が当初計画の約2倍の5兆円に達すると予想されることから、昨年12月4日に経済合理性が無いとして断念している。

 ●建設費と総事業費を峻別し、政府が債務保証を
 我が国の原発建設は、メーカが建設し、電力会社がその建設費を負担し、その後、発電した電力料金でその投資を回収する。原発1基の「建設費」は数千億円だが、それが生み出す電力は数兆円に達する。メーカのリスクは低い。一方、海外では、建設段階から、原発建設費とその後の数十年の設備維持費・人件費と経営に要する費用の合計である「総事業費」の交渉となる。我が国のマスコミ報道は、数千億円の原発が福島原発事故の安全対策で数兆円に膨れ上がったというような事実誤認の報道が多数を占め、それが世論の反対と政府の原発輸出の及び腰につながっている。建設費と総事業費を峻別し、総事業費は政府が債務保証しなくては、この輸出は進まない。
 アラブ首長国連邦(UAE)で、我が国が負けて、韓国が受注したのも、韓国政府が総事業費の債務保証をしたからである。UAEの韓国製原発は既に営業運転に入っている。中国に建設したWH製の最新鋭原発AP1000も3基が既に営業運転に入っている。我が国の原発3大メーカは敗退し、今や中国・韓国・ロシアにとって代わられた。国際原子力協会の予想によると、地球温暖化を1.5℃に抑えるために2050年までに1000基分の原発が建設されるとし、そのうち中国だけで200基を建設する。中国のアジアインフラ投資銀行(AIIB)の主目的は中国のシルクロード諸国への原発輸出投資である。我が国政府は、原発輸出の仕組みを強靱化する必要がある。

 ●再エネ付加金制度(FIT)の是正を
 我が国に設置された昨年度までの太陽光パネルの総出力は、原発50基分に達した。しかし、低い稼働率のため、年間の総発電量シェアでは、たかだか5%しかない。原発なら25%を発電できた。そして5%の太陽光のためにFIT制度で徴収される再エネ付加金の総額は90兆円に達すると予想される。太陽光事業の買い取り価格が諸外国に比べ数倍高く、投資目的の金融商品と化したからである。今年度だけで3.1兆円で、その額は消費税2%分よりも高い。日立の原発輸出を困難にしたのはわずか9000億円の出資である。90兆円は海外投資に向けられ、国富が国外に出る。バッテリーの開発や設置を義務づければ、国内投資になり、電力網の強靱化につながる。安全性を高めた原発の早期再稼働やリプレース・新規立地も、我が国の産業の成長戦略になる。我が国のエネルギー政策の見直しが急務である。(了)