公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

【第25回】国民の理解超える小沢氏不起訴

h0330 / 2010.02.15 (月)


TMI総合法律事務所弁護士 頃安健司

民主党の小沢一郎幹事長は、石川知裕元秘書(現代議士)に係る政治資金規正法違反(虚偽記載)の共犯として告発を受け、東京地検特捜部の取り調べを受けたが、嫌疑不十分で不起訴となった。この事件については、「形式犯に過ぎない微罪で石川代議士を逮捕したのは権力の乱用である」「石川代議士が小沢幹事長の指示で虚偽記載を行ったのは明白であると思われるのに不起訴になったのはおかしい」という正反対の評価がなされている。

虚偽記載指示の疑い消えず
まず前者の「形式犯に過ぎない微罪」かどうかであるが、容疑となった事実は「5年以下の禁固又は100万円以下の罰金」に当たる犯罪であり、情報開示の重要性を考えると、形式犯とも微罪とも言えないことは明らかである。検察が強制捜査に踏み切った点についても、石川代議士の元私設秘書によれば、同代議士は別件の政治資金規正法違反事件で積極的に証拠隠滅を行ったとのことであり、本件においても証拠隠滅行為を行う恐れは十分あったと思われ、逮捕・勾留こうりゅうはやむを得ず、検察権の乱用という非難は当たらない。

次に後者であるが、検察は、伝統的に「有罪を得る確信」がなければ起訴しないという立場をとっており、これに対しては「有罪を得る見込み」があれば起訴すべきであるとの批判もあるが、これまでの検察の立場を前提とする限り起訴は難しかったのではないか。ただ、それは法律家の考えで、一般国民の目からすれば、延べ20億円余の巨額の虚偽記入について小沢幹事長が知らなかったというのは理解を超えており、小沢幹事長の指示少なくとも了解があったのではないかという疑いはぬぐいきれない。

検察審査会の議決で起訴も
本件は検察審査会に不服申し立てが為されたようであるので、今後検察審査会において国民の目線で不起訴の当否が判断されることになる。検察審査会は、選挙人名簿の中からくじで選ばれた11名で構成され、8名以上を以って起訴相当の議決がなされたときは、検察庁はそれを受け公訴提起の要否を検討しなければならない。検察庁が再度不起訴の決定をしたときは、検察審査会において、また、その当否が審査され、8名以上の多数により起訴をすべき旨の議決がなされれば、裁判所の指定した弁護士が、検察官に代わって公訴の提起・遂行を行う。したがって、本件もこれで一件落着ではなく、いずれ裁判所の判断に委ねられる可能性は十分ある。(了)

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第25回:国民の理解超える小沢氏不起訴(頃安健司)