日本政府は昨年12月31日に国際捕鯨委員会(IWC)に脱退を通告、半年後の今年6月30日に効力が生じたため、7月1日から日本の200カイリ内(排他的経済水域)で商業捕鯨を31年ぶりに再開した。
昨年12月に遡るが、日本がIWCからの脱退を表明した時のメディアの扱いぶりには大いに失望した。大手メディアは揃って批判的に扱った。「国際協調の精神に反する」「日本の外交にとってマイナス」「捕鯨は世界の非難を買うだけで、再開するに値しない」といった論点である。何と表面的で、底の浅い見方だろう。IWCの内情を把握していない幼稚な指摘だ。
●国際いじめ集団のIWC
IWCはずばり言って〝国際いじめ集団〟である。その根拠を挙げてみる。第一に国際捕鯨取締条約に反する決定をしている点。1982年に採択した商業捕鯨モラトリアムは同条約の目的に背く。同条約には「鯨資源の保護と利用」「捕鯨産業の秩序ある発展」が目的として明確に謳われている。
第二に、モラトリアム解除の約束が無視されていること。モラトリアムには「遅くとも1990年までに科学的根拠の下にモラトリアムを見直し、捕鯨枠を設定する」との付帯条件が付いていた。IWC科学委員会は、わが国の調査捕鯨の成果に基づき、1992年に鯨資源の「改定管理方式」を確立、南極海のミンク鯨の捕獲枠として年間2000頭を勧告した。だが、本会議では多数決で葬られている。
いじめの第三として、IWCの反捕鯨国は捕鯨に反対する理由に「倫理に反する」点を挙げていることだ。鯨類を殺すことは動物愛護の観点から許せないとの考えであるが、明らかに特定の動物観の押し付けだ。倫理が討論のテーブルに出された25年前に日本はIWCから脱退すべきだった。
●海底牧場で鯨を飼育
政府は今後、味方づくりと国際世論の理解獲得の努力を惜しんではならない。IWC加盟89カ国のうち41カ国は日本支持国である。そのほとんどが発展途上国だが、鯨類を人類の食料資源として持続的に利用すべきであるとの点で日本と考えが一致している。
これらの国と連携して「世界牧鯨機関」の創設に歩を進めるべきだ。英国のSF作家アーサー・C・クラークが小説「海底牧場」(1952年刊)でその実現を予想している。南極海に広大な海底牧場を開拓して鯨を飼育し、老齢のオスを間引いて鯨肉の缶詰に加工し、乳の出るメスから搾乳して鯨乳の缶詰を作る。そして食糧難に苦しむ国々に提供するのである。
地球人口が2055年ごろ100億人に達する時に実現が十分予測できる機関である。そのような機関を牽引できるのは日本だけだ。(了)