12月16日、東京とソウルで日韓関係をめぐり二つの動きがある。東京では戦略物資の輸出管理をめぐる日韓局長級対話が開かれる。報道によると、ソウルでは戦時労働者補償基金法案が韓国国会に提出される。日本の超党派国会議員がつくる日韓議員連盟の幹部らは、文喜相韓国国会議長が主導したこの法案に両国関係打開への期待をかける発言をしている。
日韓関係を40年以上観察してきた私は、文議長案は問題解決につながらないと断定する。一方、輸出管理は戦略物資がテロリストや無法国家に渡らないようにするという原則を曲げてはならない。だから、日本が議長案に期待をかけて輸出管理問題で譲歩することは、二重の意味で愚策だと強調する。
●金銭で反日運動は止まらない
基金や財団からお金を配る方式では、反日運動を止めることはできない。それは慰安婦問題で経験済みだ。戦時労働者問題でも、過去に日本企業が「これ以上問題にしない」という条件付きでお金を払ったケースもあったが、日韓の活動家が新しい原告を探しだし、提訴や抗議デモをしつこく続けてきた。
戦時労働者問題で我が国政府がすべきことは、歴史的事実に踏み込んだ反論と国際広報だ。外務省は第2次安倍政権になってから、慰安婦問題については事実に踏み込んで反論と広報を開始した。外務省ホームページにはトピックス欄に「歴史関連」というアイコンがあり、クリックすると「慰安婦」というコーナーがあって、「強制連行を示す資料は存在せず、性奴隷という表現は事実に反し、慰安婦の数に関する20万人説も根拠がない」と日英両語でしっかり記述している。
ところが、戦時労働者問題は「歴史関連」に記述が一切ない。ホームページのトップの「国・地域」から「アジア」「韓国」と進んでやっと「旧朝鮮半島出身労働者問題」というページにたどり着く。しかし、サンフランシスコ平和条約と日韓請求権協定で解決済みという国際法上の議論しか出ていない。労働者動員は当時の法に基づく合法的なもので、強制連行や奴隷労働もなかったという主張は存在しない。
戦時に民間企業で2年間、比較的高い賃金をもらって戦争に協力したことで、戦後なぜ賠償をもらえるのかという、事実を踏まえた根本的な反論を広めていかない限り、反日運動はほぼ永久的に続く。
●勇気ある韓国知識人を裏切るな
韓国でも勇気ある学者、知識人が歴史的事実に基づく「アンチ反日」の活動を始めた。ベストセラー「反日種族主義」の著者の1人である李宇衍博士らは12月4日と11日に、在韓日本大使館前の慰安婦像の撤去を求める街頭活動を行った。慰安婦像付近で反日集会が持たれている水曜日の同じ時間に、そのすぐ近くで実施した。11日には左派活動家から暴行を受けたが、歴史的事実を歪曲して反日を助長する慰安婦像や労働者像が撤去されるまで抗議活動を続けると宣言している。我が国政府や企業が安易な譲歩をすれば、体を張って歴史の真実のために闘っている彼らを裏切ることになる。(了)