4月15日の韓国総選挙が近づいた。現時点で文在寅政権の与党と準与党側が圧倒的に有利な情勢だ。
韓国の国会は定員300の1院制だ。任期は4年で、解散はない。一方、大統領は任期5年の1期限りだから、任期中のどの時点で総選挙があるかは大統領ごとに異なる。文在寅大統領にとって今回の総選挙は、任期3年を過ぎた時点での中間評価的性格を持つ。
勝敗の分かれ目は半数の150と3分の2の200である。保守派が狙う文在寅大統領弾劾訴追のためには3分の2が必要だ。一方、文在寅政権が狙う南北連邦制統一のための憲法改正国民投票の実施も3分の2が必要だ。保守派が過半数を取れば、ナチスドイツの秘密警察の例えでゲシュタポ法と呼ばれる高位公職者犯罪捜査処(公捜処)法を廃棄することが可能になるし、取れなければ、予定通り7月に公捜処が発足し、政権の不正を捜査した検事総長らが逮捕される可能性が高まる。
●コロナ対処で政権支持急増
表向きの争点は、文在寅政権が中国・武漢発の新型コロナウイルス対処に成功していることを評価するか、経済を破綻させたことを批判するかである。1月段階では、経済失政への批判が強く、検察が政権中枢の高官を地方選挙不正事件などで起訴したことも重なり、政権側の苦戦が予想された。
ところが、2月に入り武漢ウイルスが韓国でも蔓延した。3月に入り、感染者増加が一段落した上、医療崩壊を防いだ結果、死亡率が顕著に低く抑えられ、政権への支持が急増した。4月初めのギャラップ調査では、政権支持は56%で、2018年の板門店での南北首脳会談直後に近い高水準となり、不支持は36%と低下した。支持理由もコロナ対処が58%だ。政党支持率でも与党「共に民主党」が41%、保守派の第1野党「未来統合党」が23%と、ほぼ2倍の差がついた
●ふがいない野党勢力
第1野党の不振は、文在寅政権の親北反米路線に危機感を持つ保守層を結束できなかったためでもある。本当の争点は、政権が進める親北政策の審判であるはずだが、第1野党は大統領弾劾に賛成した機会主義勢力と統合して、在野保守勢力を失望させた。収監されている保守派の朴槿恵前大統領、李明博元大統領の釈放さえ公約に入れていない。
それだけでなく、与党側が「未来統合党は安倍政権を擁護し、日本には何の批判もできない」と訴えていることに対して、韓国の現代史を歪める「反日種族主義」だときちんと反論せず、あろうことか選挙ソングに反日歌謡「独島はわが領土」を採用し、黃教安代表らが笑顔で歌う画像を拡散している。
昨年10月に100万人近くの太極旗デモを成功させた在野保守勢力も、リーダーの全光焄牧師が事前選挙運動という信じられない罪状で逮捕され、太極旗デモ勢力を母体とする政党が3つに分裂するなど、反文在寅勢力の受け皿づくりがうまくいっていない。現情勢では、野党の過半数割れは避けられず、与党側が改憲ラインの200議席以上を取るという最悪シナリオを阻止できるかどうかが焦点となっている。(了)